2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧
ただし、産業革命だけとっても、これまで、さまざまな論点をめぐって論争が展開されてきました。たとえば、産業革命は産業社会を生みだしたか否か、という問題です。労働者は熟練技能を失って工場で働いていたのか、それとも、手に職を取り戻そうとしていた…
高校世界史の教科書といえば、ぼくにとってはもう二十年以上前の記憶になりますが、膨大な史実と年号がつめこまれ、それらを暗記するためにラインマーカーで何度も引いた線でいつの間にかグチャグチャになった本です(それくらい記憶力が悪かった、というこ…
「この男は、時折りなにやら言葉を口にしますが、男には男の生まれ育った地の言葉があり、私たちにも言葉があります。異国の言葉であっても、努力をすれば言葉が通じ合えるのではないでしょうか」 […] 「それは、通詞のお方であってようやく叶えられること…
一八世紀のイギリスにおける中産階級の台頭、その生き方に対応するイデオロギーの明確化、そしてそれに応える散文ジャンルの出現━━端的に言えば、小説の成立事情を説明するのに必要とされたのはこれらの組み合わせであり、その組み合わせの巧拙が論の有効性…
労働大学予備校のある学者は泣き叫んだ。 「これはニトロ原子爆弾ですぞ。放射性核分裂です。二十年前にウエルズがそのことを書いていましたよ」 世界SF全集〈第9巻〉エレンブルグ.チャペック (1970年) 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1970 メディア: ? …
正解がひとつということはあり得ないのがコミュニケーションですが、それを何とか能力として測定し、スコアという数値で示そうとしているのが英語能力検定です。ですから高得点であっても、実際のコミュニケーションで高い能力を発揮するとは限りません。英…
英語力をつけるには、会話パターンを暗記しているだけでは効果は薄く、ともかく「読む」ことです。なぜなら、コンテクストの中で生き生きと使われている言葉を学ぶことを可能にしてくれるのは、何と言っても読むことだからです。IMFのラガルド専務理事は…
まず、よく「ボキャビル(ボキャブラリー・ビルディング)」の必要性が言われますが、「語彙」はどの程度あったら良いのでしょう。話したり書いたり使いこなすことのできる発表語彙は、読んだり聞いたりした時に理解できる受容語彙よりも少ないとされている…
In 1973, I got together with Allen Toussaint to do an album with the Meters, who were fonkiest rhythm section anywhere. I had known Allen and the organist for the Meters, Art Neville, from the recording scene in the late fifties and early …
このように読者のみなさんには、ヘーゲルの思想やモノの見方を具体的な例に落とし込んでいく技法を身に付けていってほしいのです。安保関連法やプーチンのような大きな題材だけでなく、洗面器のお湯に温度計を入れるとか世論調査のやり方といった身近な例で…
ロンドンの空気も、けっして日本にとってよいものではなかった。日英同盟はあったが、これは戦争の相手が二ヵ国になったとき共同参戦するというもので、相手が一国の場合は援助する必要がなく、イギリスは中立国の立場にあった。また王室の関係からいっても…
世上、縁談窶(やつ)れといふ言葉がある。今まで何回も見合ひをして来たが、残念ながらその都度、もうちょっとのことで良縁がなかった。いつ結婚できるか気になることだ。さういつた女を、不憫に思つて言ひだした熟語だらう。女として必ずしも欠陥があると…
神近女史は下井草のこの番地に住んでゐなかった。 その頃は無論のこと、現在も住んでゐない。神近さんは強力な左翼の闘士だから、警察の目を逃れるため、出版社などに知らせる住所は適当に出まかせを言っておくのだらう。その証拠には、下井草一八一〇神近市…
北海道の風景というのは、よくいえば雄大だが、曇りや雨降りのときには、”どんよりした風景が雄大”だから救いようがない。都会のように天候とは関係なくネオンがきらめいているような場所なら救いがあるが、どこを見ても陰鬱でモノトーンな風景が果てしなく…
私はセイコーインスツルの電子辞書を使っています。オックスフォード新英英辞典、ロングマンの辞典のほか、『日本国語大辞典』、『角川類語新辞典』など、日本の主要な辞典が入っているんですが、平凡社の『世界百科大辞典』が入っているから購入を決めまし…
ある日、後に母から相続することになるアパルトマンのソファーに寝転がっていたところ、「外婚制共同体家族の分布図」と「共産圏の地図」とが突如、重なったのです! まさに啓示でした! 私は何らかの目論見からこの二つを重ねようとしたのではありません。…
豊崎 わたしが好きなのは「アメリカの鱒釣りテロリスト」。六年生の連中が一年生の背中に、白墨で「アメリカの鱒釣り」って落書きしまくる顛末が描かれているんですけど、〈わたしたちは、この一年坊主が背中にアメリカの鱒釣りと書きつけられたまま立ち去る…
Last, and perhaps the most important, the Luddites were understood to represent not merely a threat to order, as riotous mobs or revolutionary plotters of the past, but in some way not always articulated, to industrial progress itself. The…
It is a basic principle of language study that sounds don't have a meaning. It doesn't make sense to ask 'What does p mean?' or 'What does e mean?'. On the other hand, we often encounter words where there does seem to be some kind of relat…
いい天気なのに昼からマンガの原稿を描く。十五日が締め切りなのだ。ここに住みはじめてから、「マンガ家です」と名乗って何人もの人に疑いの眼差しを向けられたが、こうしてちゃんとマンガを描いて収入を得ているのだ。夕方、とりあえず描き上げた原稿を東…
豊崎 『薔薇の名前』はたしかに厚いし、語り口が現代風じゃなくて読みづらい。話の進み方も、いやがらせかと思うくらいかったるい。けど、根底にあるのは本物の教養です。エーコってトマス・アクィナスの研究者なんですけど、彼の中世哲学の造詣がにじむとい…
私は昭和二年の初夏、牛込鶴巻町の南越館といふ下宿屋からこの荻窪に引越してきた。その頃、文学青年たちの間では、電車で渋谷に便利なところとか、または新宿や池袋の郊外などに引っ越していくことが流行のやうになってゐた。新宿郊外の中央線沿線方面には…
しかし、経専の書庫とはべつに、研究室に未整理のままおかれていた「小川文庫」をみたとき、これを使えばなんとかやっていけるという感じがして、就任を承諾した。「小川文庫」は、いまでは経済学部の蔵書全体のなかに組み込まれてしまって、全貌をとらえる…
That changed with METI's Cool Japan project in 2010, which attempted to promote Japanese pop culture overseas. Fukasawa attributes the failure of this scheme to the government's lack of self-awarenes: Once you refer to yourself as being "c…
いくつかの偶然が重なって、私は今九階にある研究室から海の方向に東京の街を見おろしながら本を読んでいる。そして、自分なりに充分に楽しんでいる。本来そう言えばすんでしまうはずのことが、しかしながら、今ではそう説明するだけではすまなくなっている…
[…]いつからはじまったのかしらないが、一橋会では毎年、教官に出題と審査を依頼して、三科(予科、専門部、本科)の学生から懸賞論文を募集していた。三科の学生といっても、水準からすれば、実質的には学部学生のためのものであって、ぼくが学部一年のと…
さいわいに大学の昇格や増設が、全国で進行中だったので、そのひとつであった北海道大学からおそらく新川士郎[…]をつうじて、高島さんに依頼があり、北海道という土地がすきだったぼくは、いくつもりになった。ところが、ここでまた杉本栄一があらわれる。…
[…]私は辺境文化に属している。そこではディレッタンティズムと即興は致命的であるといっていい。私は、劣等感に満ち、絶えず《今現在の》情報を持っていないのではないかという恐怖の下で、学者生活に入った。そのことを自覚してからというもの、その問題…
だれもが「サザン・ドロール」で話していた。曖昧に溶けたような甘い母音を、ゆったりとした口調でひきずりながら鼻声でしゃべる。二人称の「ユー」に単数複数の区別が存在する(単数はふつうのyouで複数はy’all)。それが南部訛りで、そうしたアクセントは…
社会科学の本でも、一般の本でも、まず断片を自分の目で読み取ることが必要です。最初に断片、それからだんだんにその本の全体を深く理解し、再解釈してゆくにも、ある断片がものをいって、それをテコにして再解釈が可能になる。 ところが、断片を自分の目で…