俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

秋からもそばにいて

佐藤 選挙を意識する政治エリートは、県紙の影響力をよくわかっています。地元の県紙記者が多少厳しいことを書いても、本気でケンカはしません。池上さんは『中国新聞』と『信濃毎日新聞』以外で読んでいる地方紙はありますか?

池上 地方に行ったときは、そこの地方紙を必ず買って読みますね。佐藤さんは?

佐藤 私の場合、沖縄に関する論評が仕事の大きなウエートを占めているので、『琉球新報』と『沖縄タイムズ』は定期購読して、しっかり読み込んでいます。ほかにも、日露関係が動き出すときは『北海道新聞』を定期購読します。ロシアも日本も北方領土について機微に触れる情報は、あえて『北海道新聞』に流すんですよ。そのときの『北海道新聞』は日露間の情報のキャッチボールを行う特別の媒体になるんです。

 

  気晴らしに読んでいた。

 こういうところは、北海道民はそんなに意識してはいないと思うけれど、北海道新聞は個人で定期購読したことがないのでわからない。たしか、大学院の寮にいたころ、院生同士で購読費を出し合って取っていたのは朝日と北海道新聞だ。でも、そのころは、そこまでのことは念頭にはなかった。

 新聞は産経、読売、日経の保守勢と、朝日、毎日、東京新聞のリベラルに分れるというのはだれでも知っているが、一紙だけ読んでいると偏りが生じるので二紙を読むことを奨めているのはまあだいたい予想の範囲内だ。ただ、では二紙を「定期購読」する必要があるのかと言うと、必ずしもそうではないというところなど新味がある。

佐藤 そうそう、大事なことを伝えなければ。「読むのは2紙以上で」と言っていますが、定期購読する新聞は、一般的なビジネスパーソンなら1紙で十分です。

池上 佐藤さんと私が複数紙を定期購読しているのは、それが仕事だからですよ。

 一般的なビジネスパーソンなら、まず同時に何紙か買ってきて読み比べ、自分に合っていそうな全国紙を定期購読する。それを「ホームグラウンド」にして、ほかは「アウェー」と思って、論調のことなる他紙を駅売りやコンビニで財布と時間の許す限り買ってくる。それで十分、と。この穏当さはけっこう新鮮に感ずる。 

 ぼくの場合は、公民館の新聞を読みに行くということもしている。定期購読しているのは全国紙ひとつと、英字紙の日曜版と英語週刊誌、たしかにもうそれで手いっぱいだ。ワシントン・ポストの電子版を読んでいたころは、眠れない明け方、起きてノートパソコンを開き、1,2時間読む日があったが、これも、習慣としてやろうと思うと時間がかかってしようがない。そんなことをしているのは、まさにそれを生業とする一部の外信部記者ぐらいだろう。

 それにしても、一時期『デイリー・ヨミウリ』を毎日読んでいた日のことは忘れない。やはりぜんぶ読もうと思うと大変で、一日3,4頁だったけれど、英字新聞の見開きのページにすべて目を通すというのはけっこう充実感がある。研究室をたたんでひとりになるとき、正直言って同僚の多くは、ぼくがその後も外国語屋を続けていくなどとは信じてはいなかったと思う。横文字を読む習慣を取り戻せたのは、まったくあの数年のおかげだ。

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秋からもそばにいて 南野陽子