雨のエアポート~雑談や世間話で馬脚が現れないように新聞くらいは読もう
佐藤 いまでも政治、経済、文化エリートで新聞を読まない人はいないはずです。軽い世間話であっても、ニュースについて何らかの見解を求められて会話が続かなければ、「その程度のやつだ」とあっさり見限られますから。今後、いくら新聞の購読者数が減っても、この傾向は変わらないはずです。
僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意
- 作者: 池上彰,佐藤優
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雑談をバカにしてはいけないというのは本当にそうなのだ。馬脚を露(あら)わすというのは手もとの国語辞典によれば「隠していた正体や悪事があらわになる」ことというけれど、悪事というほどでなくとも、それはないでしょという無知がばれるきっかけは往々にしてこの雑談や世間話だ。
去年のアメリカ大統領選でも、民主党でも共和党でもない第三の党から出ていた候補が、テレビ討論で滔々と持論を展開していたまではよいが、シリア内戦の話になり、司会者が「いまのアレッポの状況は…」と切り出した時、「アレッポとは何のことだ?」と即座に返答し、ろくに国際ニュースも見ていないことが明らかになってしまった。
で、こう言うぼく自身が冷や汗もので、そういう失態を何度も犯している。「ボリス・グレべンシコフって誰?」とか、もう、無知丸出しの受け答えで座を白けさせた思い出はいくつもある。
だから、こんなもの役に立たない、と言って、せっかく高価な授業料を払って出ている学校の授業をロクに聴かない若い人のことが心配で仕方なかった。たしかに、クルマのセールスマンになれば車にくわしければよく、住宅の営業マンになれば何より住宅のことを徹底的に知らなければならない。だが、顧客や取引先とはかならず雑談がある。このとき、相手はプロ野球や芸能界の話ばかりするわけではない。マイナス金利や、為替相場や、日本経済の来し方行く末についてひと通りの受け答えのできない営業マンなど、だれが信用するだろう。
ぼくはロシア語屋になったけれど、制度としては最初の大学で経済学士という学士号をもらった人間だ。ただ、それに価する勉強をしないまま、トコロテン式に学校を出てきたことをずっと悔やんでいる。ロシア語の専門家だから世間一般のニュースには疎くて良いとも思わない。だから、今もし教壇に立つことがあるとしたら、とかく自嘲ばかりしている経済経営系の学生に、手を変え品を変え、ここに書いたような話をするだろう。