俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ゾンビーズ『ビギン・ヒア』

最初はあんまりいいと思わなかったレコードが、聴きこむうちにだんだんよくなってくる。よくありますよね。そんな状態を、英語で「このアルバムはgrowする」というのだ、ということを知ったのはいつだったでしょうか。grow 育つ、ねえ。いや、本当に英語でそんな言い方をするのかどうか、よくは知らないのです。で、今日、辞書を引いてみました。僕の持っている一番大きな英和辞典にgrow on[upon]なる熟語が載っています。「…にとってだんだんよいと思われてくる。に価値がわかってくる」とあります。His style will soon grow on you though you may not like it at first.(彼の文体は初めは気に入らなくても、そのうちに君もよいと思うようになるだろう)という例文。ははあ、これですか…。

はじめはそれほどよいとは思わなかったのに、むしろ失望すらしたのに、たんだんgrowしてきたアルバムというのはいくつもあります。いま、これはひょっとして僕の中でgrowするんじゃないかな、と思っているのが、

ゾンビーズ『ビギン・ヒア』

「シーズ・ノット・ゼア」と「テル・ハー・ノー」が入ったアルバム。彼ら最大のヒット曲「二人のシーズン」は入ってませんけど、上記2曲にひかれて中古屋で購入。「シーズ・ノット・ゼア」はサンタナのカバーでさんざん聴いた曲。「テル・ハー・ノー」はその昔、大瀧詠一さんのラジオ番組「ゴーゴーナイアガラ」を一回だけ録音したとき、偶然流れていた曲。AM放送のエアチェックですから音質の細かいところはわからなかったんですが、もやのかかったようなムードのあるヴォーカルとバンド・サウンドが好きでした。このアルバムを買ったときも、全編があのムードだったら素晴らしいだろうな…と思ったのでした。

予想は外れて、ロックンロール/R&Bのスタンダード曲のカバーがいくつも入った、いかにもブリティッシュ・ビート・バンドのアルバムです。ちょっとがっかりして、それきり聴いていなかったのですが、今回ひさびさに聴いてみると、「ロード・ランナー」「サマー・タイム」「ユー・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー」などなかなか味のある演奏。こういう、超一流ではない白人バンドの演奏の機微を味わえるというのは、最近心の余裕があるのかな、自分。これ、案外growするかもしれません。