俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

一九九九年のゴールデンウィークの「コステロ音頭」の思い出

「この男は、時折りなにやら言葉を口にしますが、男には男の生まれ育った地の言葉があり、私たちにも言葉があります。異国の言葉であっても、努力をすれば言葉が通じ合えるのではないでしょうか」 […] 「それは、通詞のお方であってようやく叶えられること…

小説の起源と中古マック~大気が不安定でひょうが降った四月某日

一八世紀のイギリスにおける中産階級の台頭、その生き方に対応するイデオロギーの明確化、そしてそれに応える散文ジャンルの出現━━端的に言えば、小説の成立事情を説明するのに必要とされたのはこれらの組み合わせであり、その組み合わせの巧拙が論の有効性…

終末のタンゴ

労働大学予備校のある学者は泣き叫んだ。 「これはニトロ原子爆弾ですぞ。放射性核分裂です。二十年前にウエルズがそのことを書いていましたよ」 世界SF全集〈第9巻〉エレンブルグ.チャペック (1970年) 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1970 メディア: ? …

通訳者の役割~語学検定も悪くはないが

正解がひとつということはあり得ないのがコミュニケーションですが、それを何とか能力として測定し、スコアという数値で示そうとしているのが英語能力検定です。ですから高得点であっても、実際のコミュニケーションで高い能力を発揮するとは限りません。英…

アメリカ野戦奉仕団というのは知らなかった~読んで得られる英語力のことなど

英語力をつけるには、会話パターンを暗記しているだけでは効果は薄く、ともかく「読む」ことです。なぜなら、コンテクストの中で生き生きと使われている言葉を学ぶことを可能にしてくれるのは、何と言っても読むことだからです。IMFのラガルド専務理事は…

英語の語彙は8000から1万語を目指そう~鳥飼玖美子『本物の英語力』

まず、よく「ボキャビル(ボキャブラリー・ビルディング)」の必要性が言われますが、「語彙」はどの程度あったら良いのでしょう。話したり書いたり使いこなすことのできる発表語彙は、読んだり聞いたりした時に理解できる受容語彙よりも少ないとされている…

ジョン博士は「そんな夜」と歌う~クレソンのかき揚げ丼を食べる四月某日

In 1973, I got together with Allen Toussaint to do an album with the Meters, who were fonkiest rhythm section anywhere. I had known Allen and the organist for the Meters, Art Neville, from the recording scene in the late fifties and early …

アナロジーについて考える寒い四月某日~MacBookも一度使ってみたい

このように読者のみなさんには、ヘーゲルの思想やモノの見方を具体的な例に落とし込んでいく技法を身に付けていってほしいのです。安保関連法やプーチンのような大きな題材だけでなく、洗面器のお湯に温度計を入れるとか世論調査のやり方といった身近な例で…

ドラマチック・ブルース~是清さんも熊楠たちを教えた語学教師だったらしいことなど

ロンドンの空気も、けっして日本にとってよいものではなかった。日英同盟はあったが、これは戦争の相手が二ヵ国になったとき共同参戦するというもので、相手が一国の場合は援助する必要がなく、イギリスは中立国の立場にあった。また王室の関係からいっても…

帯広の夜~文学やつれと語学やつれなど

世上、縁談窶(やつ)れといふ言葉がある。今まで何回も見合ひをして来たが、残念ながらその都度、もうちょっとのことで良縁がなかった。いつ結婚できるか気になることだ。さういつた女を、不憫に思つて言ひだした熟語だらう。女として必ずしも欠陥があると…

春の嵐の日の夢に出てきた「ミスティ・トワイライト」

神近女史は下井草のこの番地に住んでゐなかった。 その頃は無論のこと、現在も住んでゐない。神近さんは強力な左翼の闘士だから、警察の目を逃れるため、出版社などに知らせる住所は適当に出まかせを言っておくのだらう。その証拠には、下井草一八一〇神近市…

どのマックを買うべきか~パソコンはへき地でこそライフライン

北海道の風景というのは、よくいえば雄大だが、曇りや雨降りのときには、”どんよりした風景が雄大”だから救いようがない。都会のように天候とは関係なくネオンがきらめいているような場所なら救いがあるが、どこを見ても陰鬱でモノトーンな風景が果てしなく…

せっかく電子辞書に入っているのだから百科事典も引こう

私はセイコーインスツルの電子辞書を使っています。オックスフォード新英英辞典、ロングマンの辞典のほか、『日本国語大辞典』、『角川類語新辞典』など、日本の主要な辞典が入っているんですが、平凡社の『世界百科大辞典』が入っているから購入を決めまし…

いとこ同士~フランス人学者の「ブリコラージュ」のまねはしてはいけないのか否かを巡って

ある日、後に母から相続することになるアパルトマンのソファーに寝転がっていたところ、「外婚制共同体家族の分布図」と「共産圏の地図」とが突如、重なったのです! まさに啓示でした! 私は何らかの目論見からこの二つを重ねようとしたのではありません。…

ブローティガン『アメリカの鱒釣り』~HDDをSSDに交換すればこのパソコンはもう少し長く使えるかも

豊崎 わたしが好きなのは「アメリカの鱒釣りテロリスト」。六年生の連中が一年生の背中に、白墨で「アメリカの鱒釣り」って落書きしまくる顛末が描かれているんですけど、〈わたしたちは、この一年坊主が背中にアメリカの鱒釣りと書きつけられたまま立ち去る…

ラッダイトとハッキントッシュ

Last, and perhaps the most important, the Luddites were understood to represent not merely a threat to order, as riotous mobs or revolutionary plotters of the past, but in some way not always articulated, to industrial progress itself. The…

音象徴と共感覚に関係があることを知って驚いていたことなど

It is a basic principle of language study that sounds don't have a meaning. It doesn't make sense to ask 'What does p mean?' or 'What does e mean?'. On the other hand, we often encounter words where there does seem to be some kind of relat…

GAOのいたころ~九〇年代はまだ日なたの明るさのあった時代で

いい天気なのに昼からマンガの原稿を描く。十五日が締め切りなのだ。ここに住みはじめてから、「マンガ家です」と名乗って何人もの人に疑いの眼差しを向けられたが、こうしてちゃんとマンガを描いて収入を得ているのだ。夕方、とりあえず描き上げた原稿を東…

What books should I read to improve my English~むかし買ったままの『薔薇の名前』なども読もう

豊崎 『薔薇の名前』はたしかに厚いし、語り口が現代風じゃなくて読みづらい。話の進み方も、いやがらせかと思うくらいかったるい。けど、根底にあるのは本物の教養です。エーコってトマス・アクィナスの研究者なんですけど、彼の中世哲学の造詣がにじむとい…

ドナドナ~北海道にいて中央線沿線の文化を夢見る

私は昭和二年の初夏、牛込鶴巻町の南越館といふ下宿屋からこの荻窪に引越してきた。その頃、文学青年たちの間では、電車で渋谷に便利なところとか、または新宿や池袋の郊外などに引っ越していくことが流行のやうになってゐた。新宿郊外の中央線沿線方面には…

田舎に生まれて洋書読みの達人になれるかどうかをめぐって

しかし、経専の書庫とはべつに、研究室に未整理のままおかれていた「小川文庫」をみたとき、これを使えばなんとかやっていけるという感じがして、就任を承諾した。「小川文庫」は、いまでは経済学部の蔵書全体のなかに組み込まれてしまって、全貌をとらえる…

クールジャパンという背理~自分を「かっこいい」と言ってる時点でかっこよくないよという指摘

That changed with METI's Cool Japan project in 2010, which attempted to promote Japanese pop culture overseas. Fukasawa attributes the failure of this scheme to the government's lack of self-awarenes: Once you refer to yourself as being "c…

枯れ野のなかの書庫~九階にある研究室から東京の街を見おろしながら、とさる教授はいう

いくつかの偶然が重なって、私は今九階にある研究室から海の方向に東京の街を見おろしながら本を読んでいる。そして、自分なりに充分に楽しんでいる。本来そう言えばすんでしまうはずのことが、しかしながら、今ではそう説明するだけではすまなくなっている…

きみ、労働価値説は損だよ~あの早春はガルブレイスを読んでいた

[…]いつからはじまったのかしらないが、一橋会では毎年、教官に出題と審査を依頼して、三科(予科、専門部、本科)の学生から懸賞論文を募集していた。三科の学生といっても、水準からすれば、実質的には学部学生のためのものであって、ぼくが学部一年のと…

昭和二十五年四月の着任のお話

さいわいに大学の昇格や増設が、全国で進行中だったので、そのひとつであった北海道大学からおそらく新川士郎[…]をつうじて、高島さんに依頼があり、北海道という土地がすきだったぼくは、いくつもりになった。ところが、ここでまた杉本栄一があらわれる。…

Truth~長いこと捜しあぐねていた『エリアーデ日記』の一節を見つけた夜

[…]私は辺境文化に属している。そこではディレッタンティズムと即興は致命的であるといっていい。私は、劣等感に満ち、絶えず《今現在の》情報を持っていないのではないかという恐怖の下で、学者生活に入った。そのことを自覚してからというもの、その問題…

南部訛りの英語はぜんぜんわからないらしいということについて

だれもが「サザン・ドロール」で話していた。曖昧に溶けたような甘い母音を、ゆったりとした口調でひきずりながら鼻声でしゃべる。二人称の「ユー」に単数複数の区別が存在する(単数はふつうのyouで複数はy’all)。それが南部訛りで、そうしたアクセントは…

Fly over the Horizon~「先生のバカ話がアホラシクテ」と真顔で言える学生

社会科学の本でも、一般の本でも、まず断片を自分の目で読み取ることが必要です。最初に断片、それからだんだんにその本の全体を深く理解し、再解釈してゆくにも、ある断片がものをいって、それをテコにして再解釈が可能になる。 ところが、断片を自分の目で…

語学徒の冬学期、一か月延長~いっぺんいじってみたかったThinkPadのことなど

何事によらず日本では矮小な意味での教科書が多すぎる。教科書というのは細かいデータとか事実とか、しっかりと覚えるべき理論、学説、話の筋立てとかで成り立っている。明治の余韻を伝える米川正夫文学史は別として、それ以後に日本で書かれたロシア文学史…

日露開戦の1904年が明治37年だから~大西巨人「老母草」の一節から

河野が、「それじゃ、お言葉に甘えて、上がらせていただきます。」と殊勝な口を利き、靴を脱して縁側に上がると、残り四人も、相次いで上がった。二番目に上がった真帆は、「お婆さまは、とてもお元気のご様子で、何よりです。」と御愛想のように述べた。老…

花梨~大西巨人「老母草」にショックを受けた

真帆は丁重に一礼し、「私たちは、文久大学の学生で、文芸部員ですが、今日はハイキングかたがた与野公園か大宮公園で桜見をしようとして、やって来ました。男子三人と女子二人、計五人連れです。与野公園には最前行きましたが、花見というか飲食は大宮公園…

図書館の本は半分しかコピーしてはいけない件~パソコンの買い替え時のことなど

もう一つの手は、国立国会図書館に行くんです。あそこで『経済学方法論』の半分まではコピーが取れます。でも、ここは発言に注意しないといけないところです。違法な行為は、いっさい薦められないわけ。二分の一のコピーが許されているのであれば、二回行け…

さくら(独唱)~基礎から積み上げた英語力はあるとき爆発的に開花する

グローバル化の入り口で何が一番重要になるかといえば英語である。 なぜ英語が重要になるのか。 「エコノミスト」誌が世界の長期予測をまとめた『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』[…]という本がある。このなかで非常に面白い分析をして…

いばらのみち~ノーベル賞級のアメリカの教授たちはおバカな質問を遮断しない

ハーバード大学では、学生たちが授業中に辞書を引けばすぐにわかるような初歩的な質問をバンバンしている。日本人の私からすると、「ノーベル賞クラスの綺羅星のごとき先生方にそんな質問するなよ」と思ったが、教授のほうも必死で学生の質問に答えるのであ…

そして僕は途方に暮れる~学問せぬは親不孝・やりすぎるのも親不孝

私が経済の道に進んだのは、和歌山県立桐蔭高校時代、倫理社会を習った[…]先生の影響が大きい。先生が宿直の日の夜九時頃、部屋におかきとコーラを持参し押しかけた。そのとき、先生から言われた言葉がある。「大学に行ける者は、行けない人の分まで勉強し…

Round About Midnight~よき床屋政談は経済と世界史を連動させる

[…]しかし、日本が支払った代価は大きなものでした。輸出産業が直撃を受け、関連企業にも影響が及んで円高不況に突入します。 日銀は、国内市場の活性化(内需拡大)のため金利を引き下げますが、利子のつかなくなった銀行預金が引き下ろされて株式や土地…

青春にオーレ~『ロンドンで本を読む』は楽しい本だ

さてどこから始めようか。おそらく初期のエッセイ、「言語一般および人間の言語」がいいか。ここではベンヤミンは「言語の出番」を予想し、認識論的=社会的諸問題を、言語という母体の内に置くことを先取りして行っている。このことは、アングロ=アメリカ…

厄落としのマイルス・デイヴィス~not worth a plugged nickelとは「一文の値打ちもない」ということ

K そうそう、よく覚えてる。のんびりした時代だった。バラック建ての生協食堂に行けば、脇の石炭小屋に雪が吹き溜まり、タバコだって、一箱ではなく数本ずつ分売していた。あの授業、高松さん、彼は授業が半分方すすむと、必ず一服吸うために休憩する。教卓…

乾湿式コピー機のこと~隣の部屋ではトニー・ウィリアムズがマイルスをボッコボコにしている

Q 最初に出会った処女詩集だったということですね。 K だから、あれは何十年も書棚にありました。丁度、学部に移ったとき、川端香男里(当時は山本 香男里)先生が、二十九かそこいらだったでしょうか、北大に赴任してきて、ぼくらは当時の青い液のなかをく…

駅~FMの失恋ソング三昧を聴きとおしてしまった春分の日

駅 Eki (Live) - Mariya Takeuchi 竹内まりや 札幌から帰って、まだ疲れが取れず、世間も連休の最終日だし、まあいいか、と一日ラジオを聴いていた。NHK-FMの『今日は一日失恋ソング三昧』。竹内まりや「駅」が流れ、そういえば、先日の最終講義をした先生は…

ラズベリー・ドリーム~マキャベリの英語の伝記が出たみたいで

www. theguardian.com Be Like the Fox: Machiavelli in His World 作者: Erica Benner 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc 発売日: 2017/05/09 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る Be Like the Fox: Machiavelli's Lifelong Quest for F…

定義不可能な先行性としての「価値」~マルチ・ディスプレイをやってみたいと思いつつ

貨幣は使用しているうちに摩滅し、名目上の価値ではなくなる。実質的な価値と名目上の価値が分離する。だから紙幣で代用できる。紙幣は「記号」になる。 池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 作者: 池上彰 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2009/…

負けないで

南サハリンは、日ロ戦争の後の一九〇五年の日ロ講和条約によって日本がロシアから割譲され、その後、サンフランシスコ平和条約によって放棄した地域である。しかし、サンフランシスコ平和条約では日本が放棄した南サハリンの帰属先は記されておらず、ソ連邦…

石焼イモとイチゴミルク~春先から初夏にかけての北海道

大正八年四月、病気療養のために札幌に帰る菊地ゆきえに同行して吉屋信子は北海道へ渡った。二日がかりで着いた札幌からはひとりになった。さらに二十四時間かけて十勝の池田へ行った。そこには四人いる兄のうちの三番目、東京帝大農科を出た忠明がいた。忠…

戦後すぐの日本ではマルクス経済学が主流だった~Surface pro 3は三年目の春

私が大学の経済学部に入学したのは一九六九年。当時の全国の大学の経済学部は、マルクス経済学とそれ以外のアメリカ流の経済学(当時は「近代経済学」という呼び方がされていました)を教える先生の数が、ほぼ同じか、マルクス経済学を教える先生の方が少し…

淡々と訳読する授業にも不思議な魅力が宿りうるということについて

『ドミニック』は私の若い頃の愛読書で、そのきっかけになったのは、学生時代に豊島輿志雄先生のティボーテの『内面』(ボードレール、フロマンタン、アミエルの評論)の講読の時間に出席したことだった。豊島さんんの担当は一般語学のフランス語の筈だった…

愛は風まかせ~少年老い易く、マクロ経済学成り難し

ウェストファリア条約が1648年だということを知らないと、国際政治の専門家への入場券はもらえない。外交官になったとしてもダメ。インテリジェンスの世界でも、まず必ず雑談があります。中国問題の専門家と言ったら、中国の人口を聞かれる。そこで間違える…

三上隆三『経済の博物誌』の懐かしさ~伊藤つかさなんて今どうしているのか

「言語をもって単に事実伝達の手段と見ず、言語表現そのものが人間の事実である」とは鴻儒・吉川幸次郎の名言である。これを彼は独力で認識・形成し、それまでの広い見聞からも、それは自分の創造するところと確信していた。たまたま本居宣長の著作を読んで…

政治経済学という単位も昔取ったけど、あれはなんで「政治」経済学だったのかということについて

economy 3 b(1): the natural ordering or system of operation of the processses of anabolism and catabolism in living bodies <the economy of the cell> (2): the body of an animal or plant as an organized whole もうこのあたりはっきり憶えていないのだが、economy 「経済</the>…

Horse to the Water~古い英語の数詞および冬の終わりのアナログLPなど

He was eight-and-twenty years old; he had a short, slight, well-made figure. The Europeans 作者: Henry James 出版社/メーカー: Createspace Independent Publishing Platform 発売日: 2014/07/20 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る…