俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

愛のきずな

歴史に「もしも」はないとされるが、もしも、ニコライ二世が絶対専制に固執せず、漸進的な緩やかな改革を受け入れていたとしたら、ロシアの歴史は別のものになっていたに違いない。また、彼が血友病の遺伝子を宿した神秘主義者のドイツ人の皇女を見初めるこ…

Mikky D~むしろ床屋政談力を不断に鍛えるべきではということについて

佐高 […]昭和二年の金融恐慌のとき、最初に東京渡辺銀行が破綻した。破綻によって取り付け騒ぎが起きるのに備えて、大蔵省が緊急措置として二〇〇円札を発行した。しかし緊急性を優先したがために、表面だけ印刷をほどこし、裏面は真っ白だった。これがいわ…

二人でお酒を~英語ができるできないは人間のできとはあんまり関係がない、しかし

佐高 […] また話が飛ぶようで恐縮ですけれど、私の故郷は酒田市ですが、それと隣接する鶴岡を故郷に持つ石原莞爾[…]に決着をつけるために、『石原莞爾 その虚飾』[…]という本を書きました。そのなかで触れたのですが、石原は満州国にエスペラント語を採用し…

クラウド・ナイン

cloud nineとは「天にも昇る心地」のことで、「1950年代にラジオ番組'Yours truely, Johnny Dollar'でポピュラーになった;米気象庁が1つの雲を9タイプに分類した最上層部」とリーダーズにはある。 ところが、オンラインの辞書を引くとダンテ『神曲』…

恋心~明日も猛暑日の北海道で、もう冬のことを考えている

水あたりでおなかをこわし、物も食べられず、水分も余計に取れない、さんざんな一日。こんな日の北海道に限って34度もあったりする。 明日は猛暑日の予報で、もうそれを過ぎると28度、29度がせいぜいだろう。そうなると内地のみなさんには申し訳ないくらいさ…

Koko

「ビバップ」って言葉は擬音語で、「バップ」「ビバップ」、あるいは「リバップ」って呼ばれてたこともありました。で、こういった擬音語っていうのは、どの言語でも一緒ですが、基本的には相手を馬鹿にしているっていうか、揶揄する感じが強い言葉ですよね…

ダイヤモンド・ヘッド

ソソ(スターリン)は、早世した兄弟とは異なり、彼だけが生き残って母親の愛情を受ける者となった。精神病理学者のフロイトは、母親の極度の愛情を受けて育った人間は、生涯にわたり征服者の感覚、つまりしばしば本当の成功に導く自己の運命への確信を持つ…

愛と誠~へらへらぼっちゃん

十六歳で歌手になろうと思い、十九歳でレコードデビューした、というと、一見、なかなか順調やないか、と思う人もあるかもしれぬが、そうではない、その後が悪かった。レコードがちっとも売れぬのである。通常であれば、その時点から下積み生活、旗を持って…

愛しのティナ

"I cannot understand why you should wish to leave this beautiful country and go back to the dry, gray place you call Kansas." "That is because you have no brains," answered the girl. "No matter how dreary and gray your homes are, we people…

ファッシネイション

[…] というものの、われわれの周りで、チェコ文学史または小史というものを手に入れるのは容易なことではない。それは日本語の問題であるばかりでなく、英仏語においても事情はあまり変わらない。イタリアを除外していいと思われるのは、この国にはアンジェ…

負債としての読書

「いや」ぼくは声に出して言った。今は『劇場物語』を読もう。誰がなんと言おうと、世の中で『劇場物語』が最高だ…… ぼくは本棚からブルガーコフの一巻ものを取り出すと、指でやさしくもてあそび、てのひらでスベスベした背表紙を撫であげた。もう何回目にな…

Green Fields~7月あたま、冬の寒さのことをすでに考えている

死んだようにといえば、帯広の冬場の「しばれ」は一様尋常ではなく、週一度の朝礼のときも、あちこちで、バタンバタンと音がした。体の弱い子供や粗末な靴下しか履いていない子供が寒さのために気絶するのである。私はといえば、ふと気が遠くなるときが何度…

これが鉄砲節だ~「不意にやってきた」研究業績は本当に偶然やってきたのか

かくてはならじと焦っていると、横浜国大の経済学部の助教授にならないかといわれ、環境が変われば新境地が開かれるかもしれないと切なく期待して、その申し出を受けた。そういう申し出が来たところをみると、お前は研究業績を挙げるべく努力していたのであ…

メディアとしての河内音頭~『東京殴り込みライヴ』のLP盤が鳴る夜

第35回すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り 2016年 堺家小利貴丸 Kawachi Ondo (bon odori) in Kinshicho, Tokyo 今日、午後の時間、老母がワイドショーを観ていた。有名なキャスターが、歌舞伎評論家の何とかさんと中継でつながって熱く語っていた。曰く、歌舞伎…

七つの水仙~とれたてのキャベツの甘味

老母が畑をやっているが、うちは農家ではない。経済合理性から言えば、畑をやる手間はたいへんで、野菜など、買った方が安いという主張はある程度うなずける。というか、ぼく自身も、なぜ老母がしんどい身体に鞭打って今でも決して狭くない畑をやっているの…

銀の雨

「一雄は強い子ですね」 「はい」 と私はしっかり云った。 「苦しいことにも泣かない子ですね」 「はい」 と私は重ねて云った。 「私は、いつまでもあなたのお母さんにちがいないけれど、もう母さんと呼べなくなるかもしれませんよ」 声がつまって答えられな…

朝日のあたる家

例えば、「トッポい」「イカレる」「ラリる」……といった表現を説明してやらなければいけないのだ。それも手紙で、それも日本人に対して。まあ、それだけだったらまだ何とかなる。日本人に対して、「潜水艦」が学生言葉で「学業不良」を意味し、「赤点」と同…

Nice Work If You Can Get It~雨のなかコップを買ってきた

もう何度となく考えたことだが、文学の場合、人間の内面の世界については、どんなにリアルなものであっても、近似的にしか現実には対応できないものだ。ぼくはなんとか思い出そうとしていた。いったい世の中の文学作品で、今のぼくの状況や、それに似た状況…

ジャンゴ~英国の選挙結果のことを英語で読みつつあれこれ

May tries to soldier on, find allies 『ジャパン・タイムズ・オン・サンデー』6月11日号、一面がこれ。soldier onは carry on doggedly, persevere≒「頑張る」。英国の総選挙でテリーザ・メイの保守党が過半数割れ、政権運営が難しくなったことはTVで…

B Flat Blues

ウィントは次のように書いている。「モレッリの著作は、芸術についての当時の他の出版物とはまったく異った外観を示していた。その本のあいだには、指とか、耳とかの挿絵が撒き散らされていたからである。それらは、個性的特徴を示す注意深い記録であって、…

Coat of Many Colors~ビニジャンのあいつはどうしているのだろうか

Dolly Parton: "Coat of Many Colors" - The Voice 2015 高校のころ、いわゆる汽車通だった。 帰りの汽車に一時期、同年輩だけれど高校生じゃないあんちゃんが乗ってきて、途中駅で降りていたことあった。たぶん、中学を出てすぐどこかで働いていた人だろう…

Jor Du~ポークソテーの日曜日

一八七四年から一八七六年にかけて、『造形美術雑誌』にイタリア絵画に関する一連の論文が掲載された。その作者は無名のロシア人研究者イワン・レルモリエフだった。そしてドイツ語への訳者もやはり無名のヨハネス・シュヴァルツェという人物だった。その一…

Root Down~ともだちの助手席で

jimmy smith root down ピーター・バラカン氏の『ウィークエンド・サンシャイン』で、これ。 リクエストした人の話もよかったなあ。いろいろあって血迷って、大切にしている貴重なCDを大量に中古CD店の買取査定に出したところ、査定に五日かかると言われ…

訳書刊行について~今日だけはまじめに書いておきます

そのロシア語の本はまるで学術書そのものの体裁をしてわれわれのもとへやってきた。何人ものロシア文学の専門家の研究室の書棚に、今もちゃっかり研究書のような顔をして鎮座していると思う。 しかし一方では、ロシア・ファンタスチカ研究者の宮風耕治さんが…

ろくでなし

Nagasaki is something of an outlier in Japanese history. While the country closed itself off from external influence between the 1630s and 1853, this Western port remained partially exmpt, a crack through which people, ideas and products c…

シンデレラ・ハネムーン~書庫から持ってきた『トロツキーの神話学』

しかし、革命が停滞し、人々が生に対する柔軟な姿勢を失い弾力性を欠いた秩序の世界にへばりつこうとする場合、祝祭的世界は理解不可能なものとなる。本来祝祭の代名詞であるはずの創造的芸術が、「革命」に対立するものとして告発されるのはこのような時で…

カンパリソーダとフライドポテト~仲間はほとんどみんな結婚して大人になってしまった

では文化はどのように創建されるのだろうか。仮に法や秩序のないところで個としての人間同士が対峙する場面を想像してみよう。人間にとって他者は自己確証の手段であり、互いに自分が主人公となり、相手を奴隷とすべく闘争が繰り広げられるだろう。こうした…

ダマしの世界~chicaneryという集合名詞をはじめて見た

chcanery ▶noun [mass noun]the use of deception or subterfuge to achieve one's purpose: Oxford Dictionary of English 作者: Angus Stevenson 出版社/メーカー: Oxford University Press, USA 発売日: 2010/08/01 メディア: ハードカバー 購入: 1人 ク…

サクセス~老人支配の思い出

モスクワのフランス大使館の前に汚い扉がついた倉庫のような建物があります。その扉をノックすると、中から監視カメラで見られて、特別に予約した人間だけが入れる。モスクワ健康センターという名称ですが、実際はブレジネフ時代から続いている長寿研究所で…

ディープ・パープル「へんな女」~精神分析は「それ当たってる!」といったものではない件

たとえば、深夜の番組でアイドルに対し精神分析などと称したことをやっているが、あれは単なる性格判断にすぎない。「そう、そうなの、当たってるーっ! 先生、どうして私のことわかるんですか?」などというのは精神分析ではない。むしろ患者が「知らない」…