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俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

きみ、労働価値説は損だよ~あの早春はガルブレイスを読んでいた

[…]いつからはじまったのかしらないが、一橋会では毎年、教官に出題と審査を依頼して、三科(予科、専門部、本科)の学生から懸賞論文を募集していた。三科の学生といっても、水準からすれば、実質的には学部学生のためのものであって、ぼくが学部一年のと…

昭和二十五年四月の着任のお話

さいわいに大学の昇格や増設が、全国で進行中だったので、そのひとつであった北海道大学からおそらく新川士郎[…]をつうじて、高島さんに依頼があり、北海道という土地がすきだったぼくは、いくつもりになった。ところが、ここでまた杉本栄一があらわれる。…

Truth~長いこと捜しあぐねていた『エリアーデ日記』の一節を見つけた夜

[…]私は辺境文化に属している。そこではディレッタンティズムと即興は致命的であるといっていい。私は、劣等感に満ち、絶えず《今現在の》情報を持っていないのではないかという恐怖の下で、学者生活に入った。そのことを自覚してからというもの、その問題…

南部訛りの英語はぜんぜんわからないらしいということについて

だれもが「サザン・ドロール」で話していた。曖昧に溶けたような甘い母音を、ゆったりとした口調でひきずりながら鼻声でしゃべる。二人称の「ユー」に単数複数の区別が存在する(単数はふつうのyouで複数はy’all)。それが南部訛りで、そうしたアクセントは…

Fly over the Horizon~「先生のバカ話がアホラシクテ」と真顔で言える学生

社会科学の本でも、一般の本でも、まず断片を自分の目で読み取ることが必要です。最初に断片、それからだんだんにその本の全体を深く理解し、再解釈してゆくにも、ある断片がものをいって、それをテコにして再解釈が可能になる。 ところが、断片を自分の目で…

語学徒の冬学期、一か月延長~いっぺんいじってみたかったThinkPadのことなど

何事によらず日本では矮小な意味での教科書が多すぎる。教科書というのは細かいデータとか事実とか、しっかりと覚えるべき理論、学説、話の筋立てとかで成り立っている。明治の余韻を伝える米川正夫文学史は別として、それ以後に日本で書かれたロシア文学史…

日露開戦の1904年が明治37年だから~大西巨人「老母草」の一節から

河野が、「それじゃ、お言葉に甘えて、上がらせていただきます。」と殊勝な口を利き、靴を脱して縁側に上がると、残り四人も、相次いで上がった。二番目に上がった真帆は、「お婆さまは、とてもお元気のご様子で、何よりです。」と御愛想のように述べた。老…

花梨~大西巨人「老母草」にショックを受けた

真帆は丁重に一礼し、「私たちは、文久大学の学生で、文芸部員ですが、今日はハイキングかたがた与野公園か大宮公園で桜見をしようとして、やって来ました。男子三人と女子二人、計五人連れです。与野公園には最前行きましたが、花見というか飲食は大宮公園…

図書館の本は半分しかコピーしてはいけない件~パソコンの買い替え時のことなど

もう一つの手は、国立国会図書館に行くんです。あそこで『経済学方法論』の半分まではコピーが取れます。でも、ここは発言に注意しないといけないところです。違法な行為は、いっさい薦められないわけ。二分の一のコピーが許されているのであれば、二回行け…

さくら(独唱)~基礎から積み上げた英語力はあるとき爆発的に開花する

グローバル化の入り口で何が一番重要になるかといえば英語である。 なぜ英語が重要になるのか。 「エコノミスト」誌が世界の長期予測をまとめた『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』[…]という本がある。このなかで非常に面白い分析をして…

いばらのみち~ノーベル賞級のアメリカの教授たちはおバカな質問を遮断しない

ハーバード大学では、学生たちが授業中に辞書を引けばすぐにわかるような初歩的な質問をバンバンしている。日本人の私からすると、「ノーベル賞クラスの綺羅星のごとき先生方にそんな質問するなよ」と思ったが、教授のほうも必死で学生の質問に答えるのであ…

そして僕は途方に暮れる~学問せぬは親不孝・やりすぎるのも親不孝

私が経済の道に進んだのは、和歌山県立桐蔭高校時代、倫理社会を習った[…]先生の影響が大きい。先生が宿直の日の夜九時頃、部屋におかきとコーラを持参し押しかけた。そのとき、先生から言われた言葉がある。「大学に行ける者は、行けない人の分まで勉強し…

Round About Midnight~よき床屋政談は経済と世界史を連動させる

[…]しかし、日本が支払った代価は大きなものでした。輸出産業が直撃を受け、関連企業にも影響が及んで円高不況に突入します。 日銀は、国内市場の活性化(内需拡大)のため金利を引き下げますが、利子のつかなくなった銀行預金が引き下ろされて株式や土地…

青春にオーレ~『ロンドンで本を読む』は楽しい本だ

さてどこから始めようか。おそらく初期のエッセイ、「言語一般および人間の言語」がいいか。ここではベンヤミンは「言語の出番」を予想し、認識論的=社会的諸問題を、言語という母体の内に置くことを先取りして行っている。このことは、アングロ=アメリカ…

厄落としのマイルス・デイヴィス~not worth a plugged nickelとは「一文の値打ちもない」ということ

K そうそう、よく覚えてる。のんびりした時代だった。バラック建ての生協食堂に行けば、脇の石炭小屋に雪が吹き溜まり、タバコだって、一箱ではなく数本ずつ分売していた。あの授業、高松さん、彼は授業が半分方すすむと、必ず一服吸うために休憩する。教卓…

乾湿式コピー機のこと~隣の部屋ではトニー・ウィリアムズがマイルスをボッコボコにしている

Q 最初に出会った処女詩集だったということですね。 K だから、あれは何十年も書棚にありました。丁度、学部に移ったとき、川端香男里(当時は山本 香男里)先生が、二十九かそこいらだったでしょうか、北大に赴任してきて、ぼくらは当時の青い液のなかをく…

駅~FMの失恋ソング三昧を聴きとおしてしまった春分の日

駅 Eki (Live) - Mariya Takeuchi 竹内まりや 札幌から帰って、まだ疲れが取れず、世間も連休の最終日だし、まあいいか、と一日ラジオを聴いていた。NHK-FMの『今日は一日失恋ソング三昧』。竹内まりや「駅」が流れ、そういえば、先日の最終講義をした先生は…

ラズベリー・ドリーム~マキャベリの英語の伝記が出たみたいで

www. theguardian.com Be Like the Fox: Machiavelli in His World 作者: Erica Benner 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc 発売日: 2017/05/09 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る Be Like the Fox: Machiavelli's Lifelong Quest for F…

定義不可能な先行性としての「価値」~マルチ・ディスプレイをやってみたいと思いつつ

貨幣は使用しているうちに摩滅し、名目上の価値ではなくなる。実質的な価値と名目上の価値が分離する。だから紙幣で代用できる。紙幣は「記号」になる。 池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 作者: 池上彰 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2009/…

負けないで

南サハリンは、日ロ戦争の後の一九〇五年の日ロ講和条約によって日本がロシアから割譲され、その後、サンフランシスコ平和条約によって放棄した地域である。しかし、サンフランシスコ平和条約では日本が放棄した南サハリンの帰属先は記されておらず、ソ連邦…

石焼イモとイチゴミルク~春先から初夏にかけての北海道

大正八年四月、病気療養のために札幌に帰る菊地ゆきえに同行して吉屋信子は北海道へ渡った。二日がかりで着いた札幌からはひとりになった。さらに二十四時間かけて十勝の池田へ行った。そこには四人いる兄のうちの三番目、東京帝大農科を出た忠明がいた。忠…

戦後すぐの日本ではマルクス経済学が主流だった~Surface pro 3は三年目の春

私が大学の経済学部に入学したのは一九六九年。当時の全国の大学の経済学部は、マルクス経済学とそれ以外のアメリカ流の経済学(当時は「近代経済学」という呼び方がされていました)を教える先生の数が、ほぼ同じか、マルクス経済学を教える先生の方が少し…

淡々と訳読する授業にも不思議な魅力が宿りうるということについて

『ドミニック』は私の若い頃の愛読書で、そのきっかけになったのは、学生時代に豊島輿志雄先生のティボーテの『内面』(ボードレール、フロマンタン、アミエルの評論)の講読の時間に出席したことだった。豊島さんんの担当は一般語学のフランス語の筈だった…

愛は風まかせ~少年老い易く、マクロ経済学成り難し

ウェストファリア条約が1648年だということを知らないと、国際政治の専門家への入場券はもらえない。外交官になったとしてもダメ。インテリジェンスの世界でも、まず必ず雑談があります。中国問題の専門家と言ったら、中国の人口を聞かれる。そこで間違える…

三上隆三『経済の博物誌』の懐かしさ~伊藤つかさなんて今どうしているのか

「言語をもって単に事実伝達の手段と見ず、言語表現そのものが人間の事実である」とは鴻儒・吉川幸次郎の名言である。これを彼は独力で認識・形成し、それまでの広い見聞からも、それは自分の創造するところと確信していた。たまたま本居宣長の著作を読んで…

政治経済学という単位も昔取ったけど、あれはなんで「政治」経済学だったのかということについて

economy 3 b(1): the natural ordering or system of operation of the processses of anabolism and catabolism in living bodies <the economy of the cell> (2): the body of an animal or plant as an organized whole もうこのあたりはっきり憶えていないのだが、economy 「経済</the>…

Horse to the Water~古い英語の数詞および冬の終わりのアナログLPなど

He was eight-and-twenty years old; he had a short, slight, well-made figure. The Europeans 作者: Henry James 出版社/メーカー: Createspace Independent Publishing Platform 発売日: 2014/07/20 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る…

ザ・エン歌~「洋書を一冊読み切る」体験について相変わらずあれこれ

では、「一冊を読み切る」ために、最初の1冊にはどのような本を選べばいいのだろうか。ポイントはずばり、以下の3つ。「内容を知っている本」「薄い本」「簡単な本」である。 大学生になったら洋書を読もう―楽しみながら英語力アップ! 作者: アルク企画開…

わな~「いつか」はいつ来るかを巡って

見渡せば、私の周囲は「いつか」の夢でいっぱいだ。いつか着る服。いつか読む本。いつか行きたい場所。いつかに思いを巡らせ、思うにまかせぬ今を慰めてきた。気づけば夢や欲望は際限なく広がり、今度は何もかもが足りなく思えてくる。 だが、いつかっていつ…

サヴィンコフ『テロリスト群像』の一節~Macにもどる可能性を考える春の雪の日

シヴェイツェルは、最初の一言から静かな釣り合いのとれた力、という印象を与えた。ポコチーロフやカリャーエフに著しかった熱狂的な陶酔は、彼には感じられなかった。しかしその話しぶりや黙っている時の様子、意見を述べる時の落ちつき、悠揚迫らぬ態度に…

宵待草~〈いじらしさ〉をめぐって

はじめて糸ひきに出る子をシンコ(新子)といったが、これは小学校四年(当時の義務教育)を出たか出ない十一,二歳のまだいたいけな子供である。それでも先輩格の「おねえさん」たちから教えられて髪を桃割れにし、赤い腰巻きにワラジをはいて、荷物も一人…

けんかをやめて~recuse oneselfの定訳ってあるのか

It's easy to use the court. They are using my case to intimidate other people...and scare others not to protest. 一週遅れで『ジャパン・タイムズ』日曜版(2月26日付)を片付けているが、上の一節はカンボジアの土地紛争の女性活動家の発言。intimi…

スキップ・ビート~ぼくも「土俵に上がらない男」と呼ばれて

佐藤 柚木麻子の『伊藤くんA to E』[…]という小説があります。 「伊藤くん」は、そこそこの大学を出た千葉の大地主の子供で、予備校の先生をやっている。仕事もクビになったりするけれども、シナリオライターになる夢を持っている。しかし一度もシナリオを…

女は世界の奴隷か~ひな祭りに解くロシア語問題集

書店で、客が若い女性店員に向かって、 「『男は女の支配者』という本はおいていますか?」 「幻想小説はとなりのフロアで御座います」 自習ロシア語問題集 作者: 中村健之介 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1992/08 メディア: 単行本 クリック: 3回 この…

ロックンロール県庁所在地~しごとのメールで遅くなっちまった

佐藤 スポーツ観光国家委員会の初代のトップ、タルピシェフは、クレムリンでエリツィンの隣部屋に執務室を持っていたのですが、私はたまたま彼と親しくなり、この「スポーツ組」の世界の一端を垣間見る機会を得ました。アントニオ猪木さんがモスクワを訪問し…

Time is Tight~語学徒の冬学期ももう三月

人はよく御維新とか、文明開化と簡単にいうが、鹿鳴館のはなやかさにしても、電信電話も、汽車も汽船も鉄砲も軍艦も、イルミネーションも、さては洋学洋書も、技術者を招いても、それには大変なゼニが必要だったはずである。そのゼニはいったいどこから持っ…

ガールフレンド~共産圏アニメ研の論集届く

もう一つの深刻な疑問がある。そもそも、個人でこんなに集めても絶対に読まない本もあるのではなかろうか。読みもしない本を集めるなんて全く無意味ではないのか。 いや、そうではない。SFとは「実現しないかもしれないが、ありえるかもしれない世界」を描…

春風のいたずら~マキャベリにおけるフォルトゥナとヴィルトゥ

電車に乗っていますと、競馬新聞を一生懸命読んでいる人をよく見かけますが、競馬でも、あの馬はどろ沼に強いんだとか、騎手がどうだとかを知って、はじめて賭けができます。たくさんの競馬新聞をかかえ込んで比較研究をする、というのは少々オーバーかもし…

はいからさんが通る~優先順位のつけ直しをしないと

...Were it left to me to decide whether we should have a government without newspapers or newspapers without a government, I should not hesitate a moment to prefer the latter. But I should mean that every man should receive those papers an…

Eleanor Rigby~書棚の奥からJ・アップダイクまで出てきて

やけに春めいて、陽光がまぶしく、気づいたら札幌の大学に滞在していた。そこでは古い友人たちが大学院生時代そのままにアルバイトをし、その一環なのか、ポーランド語の講読会などをやっている。ぼくはいつもと違い、事務室の一角にデスクを用意してもらう…

Canned Music~その先輩は気さくで有能な人だったが

日本の英語学習書には「その発音はダメ」、「ネイティブにはこう聞こえます」という風にあおるものもよく見かけますよね。発音に自信のない人にとってはグサッと刺さる言葉ですが、そういうものは、あまり気にする必要はないでしょう。 大学生になったら洋書…

Just The Two of Us~サローヤン読了

"Any work that has to be done around here, men can do. Girls belong in homes, taking care of men, that's all." The Human Comedy 作者: William Saroyan 出版社/メーカー: Dell 発売日: 1966/08/15 メディア: マスマーケット 購入: 1人 クリック: 2回…

瞳いっぱいの涙~冬の終わりの北海道でサローヤンを読む

"It was right here that she stood. I'll never see her again, most likely, but even if I do, I'll never see her again as she was when I saw her this afternoon." The Human Comedy 作者: William Saroyan 出版社/メーカー: Dell 発売日: 1966/08/15…

花咲く乙女よ穴を掘れ~サローヤンを一日で読めるかと思ったが

[…]外国語の本を読むときの永遠の問題は「コツコツ辞書を引きながら読むべきか、それとも辞書をなるべく引かずに流れをつかむよう心がけるべきか」である。ひとまずの個人的な答えは「両方やってみた方がいい」。読んでみて、この本はわりとやさしい、と思…

ジュ・テーム~持っているのについ買ってしまった内田義彦『社会認識の歩み』

マルクスが生まれたのは、後進国ドイツですね。後進国ドイツ、後進国ドイツということを、マルクスはよく言っています。しかし後進国ドイツの産という運命は逆手にも取れる。単なる宿命ではない。たとえば彼はヘーゲルを読みとって自分のものにしております…

キラキラ星あげる~crustaceanは「エビカニ類」、impasseは「袋小路」

上智の英文科のいくつかのクラスでノーマン・ルイスのこの本を使ったところ、おもしろい結果が出た。私のクラスにいた学生が出身県の留学生として留学した。その県から四、五人留学させてもらったらしいが、向こうの大学に入った途端、ヴォキャブラリー・テ…

ポケベルが鳴らなくて~柴田元幸氏が初めて読んだ原書はオーウェル

最初に通読したのはジョージ・オーウェルの1984(邦訳『1984年』)です。大学3年になったと同時に休学して、イギリスを旅行してヒッチハイクしていたとき、全然車が来なくてほかにすることがなくて道ばたでずっと本を読むしかないっていう状況があって…

ヴァージン・ブルー~エマニュエル・トッドのEU本や松本哉のマヌケ本を読みかけのまま過ぎる暖かな金曜

フランスの「反米」は、ドイツの「反米」に比べれば、冗談のたぐいにすぎません。私見によればドイツ人は、第二次世界大戦における米国の勝利を正当なものと見做していません。真の勝利は地上戦における勝利であり、その勝利はロシアのものであったというこ…

さよなら好き~アダム・スミスの講義を聴くためにグラスゴウに送られたモスクワ大学の学生らがいたらしいこと

ついにこの講義の核心的な部分が、一七五九年に『道徳的感情の諸理論』として公刊された。(戦前わが国ではこれを『道徳情操論』と訳していたが、いまでは『道徳感情論』と訳されるのが普通である。)いうまでもなくスミスの第一の主著である。道徳という名…

ルナルナ TIKI TIKI~コールドウェル『タバコ・ロード』における土地所有の概念

"You're going to make me leave?" "I done started doing it. I already told you to get off my land." "It don't belong to you. It's Captain John's land. He owns it." "It's the old Lester place. Captain John ain't got no more right to it than …