俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

さだまさし「檸檬」

フォークっぽい音楽は苦手、ましてやさだまさしさんは大の苦手、のはずの僕ですが、なぜかこの曲は好きだったりします。

東京で暮らしたことがないので、この歌の舞台となったあたりを実際によく知ってるわけじゃないんです。それでも、湯島聖堂、聖橋、快速電車の赤い色、と舞台設定がそろうと、東京のたぶん秋の街の情景が脳裏に浮かびます。

仕事で月に2,3度上京していた頃、会議の始まる前、羽田→浜松町→東京駅→御茶ノ水駅というルートでまず神保町に立ち寄っていました。M大学の前に昔ながらの立て看板があったり、組合員らしき教職員が集会かなにかをしていたりするのを見ながら、「こんなところで学生時代を過ごした人は、地方の大学に勤めてるのなんか、馬鹿馬鹿しく思うかもしれないな…」なんて思いました。

そうだ、そういえば某T大学が会場となった学会で報告をしたときは、上野のわけわかんない名前のホテルに泊まって、歩いて会場に向ったんですが、あん時も「ここが『無縁坂』か」なんてことに感心してましたね。さださんは、「檸檬」では作中の女性に「この街は青春たちの姥捨て山」と言わせてますが、4年ぐらいなら東京に住んでみたかったですね。

放物線を描いて川面に落下してゆくレモンに、青春の終わりへのほろ苦い哀惜をこめた、なかなかの佳曲だと思いますよ。捨て去るときにはこうして、できるだけ遠くへ投げ上げるもの、という締めくくりが鮮やか。うん、あまりに出来過ぎなところが疵、というぐらいよくできた曲です。