俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

スターボー「たんぽぽ畑でつかまえて」

なにやらperfumeという女性ヴォーカルグループが話題だそうで、そのうち耳にするかなと思っていたんですが、未だに聴いたことがないんですよ。で、どんなグループなのか書かれたものを読んだりすると、僕なんかはスターボーを思い出したりするんですね。

手元にあるのは2006年に再発されたスターボー『STARBOW Ⅰ たんぽぽ畑でつかまえて』(製作・発売ユニバーサルミュージック、企画・販売ヴィヴィッド・サウンド・コーポレーション)

この再発、せっかくの好企画なんですが、解説もなく、原盤が何年何月発売、という表記すらありません。いつものこと、といえばそれまでですが。

松本隆作詞・細野晴臣作曲の「ハートブレイク太陽族」でデヴュー。少女3人によるテクノ歌謡という野心的な着想ですが、異彩を放つ宇宙人ふうないでたちと演出は、歌番組などでも浮いていました。プロデュースした大人たちの果敢さはよいとして、本人たちは相当無理なことをやらされていたのかも。当時からそのことが気になって仕方ありませんでした。本当のところはもちろんわかりませんけれど。

その後、路線をがらりと替え、少女アイドルグループらしい「たんぽぽ畑でつかまえて」(作詞・麻生香太郎、作曲・馬飼野康二)をリリース。レコード会社はそうとう本気で売るつもりだったんでしょう、深夜放送でさかんにスポットCMが流れていました。僕は、どっちかといえば、この「たんぽぽ畑」のほうがすんなり聴けました。歌詞にはまだ宇宙人ぽさを残しつつ、きちんとロマンティックな盛り上がりのある歌謡曲に仕上がっています。

春が来たら すべてあげる

春が来たら たんぽぽ畑でつかまえて

この詞の発想自体が、サリンジャーライ麦畑でつかまえて』のタイトルのもじり。サリンジャーの原著タイトルが"The Catcher in the Rye"で、主人公ホールデンが夢見ているのは誰かに「つかまえて」もらうことではなく、ライ麦畑の断崖から落ちそうになっている子供たちを救う「捕まえ手」になることなのだ、というのは皆さんご存知の通り。そこにひねりを加えて「(私を)つかまえて!」という愛の呼び交わしに変形させたのは訳者・野崎孝の手腕です。そこに乗っかったのがこの曲の発想の根本ですね。

アルバムは、細野・松本コンビの曲を中心とするA面と、路線転換後の楽曲をあつめたB面からなります。実は、再発されたCD、ちゃんと通して聴いてません。「たんぽぽ畑でつかまえて」だけ、愛着があって何度も聴いてしまいます。でも、テクノな「ハートブレイク太陽族」も嫌いじゃないですよ。今度通して聴いてみます。