俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

学生通り~福沢諭吉と森山栄之助

[…]けれども段々聞いてみると、その時に条約を結ぶというがために、長崎の通詞の森山多吉郎という人が、江戸に来て幕府の御用を勤めている。その人が英語を知っているという噂を聞き出したから、ソコで森山の家に行って習いましょうとこう思うて、その森山と…

eponymとnamesake~時代はあなたに委ねてる

力学上の法則に、その発見者の名を冠してニュートンの法則とよばれているものがある。経済学においても、その原理・法則の発見・創唱者に敬意を表すべく、その人物の名前をつけてよぶことがある。家計が貧しければ貧しいほど、その家計の総支出のより多くの…

父さん~口唇ヘルペスの思い出

二七行 シャーロック・ホームズ わし鼻の、やせて骨ばった、かなり人好きのする私立探偵で、コナン・ドイルのさまざまな物語の主人公である。いまのところこれがどの物語への言及[…]なのかを確かめる手だてはないが、われらの詩人がこの〈後退する足跡の事件…

ぼくは通訳案内士の資格は持っていない~「背徳のスウィング」を歌っていたバンドはどうしているか

www.huffingtonpost.jp 昨日の新聞に出ていた。 お金を取って外国人の通訳ガイドをするには通訳案内士という資格が原則として必要なのだが、その規制を緩め、資格のない者にも業務をみとめようという話。 まだ「通訳案内業」という名称だった時、一度、試験…

涙のジルバ~無音のテレビを観ながら/本を探す未明

(このぼくはうんと前から森のことを考え、森について議論し、森の夢を見てきたけれど、そのぼくでさえも、それが実在することを疑ったことはない。それが存在することを確信したのは、はじめて断崖へいったときではなくて、表玄関にかかっている看板に〈森…

若葉のささやき~「語根」という言葉の思い出

「わたしは泳ぎよりも、水にもぐる方が得意なのよ!」とミイコが言ったので、ダル・ヴェーテルはふたたび眼を丸くした。 「だって、わたしの先祖は日本人なのよ。昔、部落全体の女が一人残らず海にもぐって、真珠や海草をとっていた時代があったことは御存知…

マンボ・バカン~金と労働価値のことに思いがけないところで出会う

貴重な金属をどうしてそのような無駄なことに使ったのだろうか、という質問に答えて、一人の古参の考古学者が、昔ある国で、その国の保有する金がそっくり消えてしまったという伝説を、古い文献で読んだことがあるという話をした。当時は金が労働の価値と同…

フルートを吹くとすっきりするという件

対日交渉をする際、どのような言語を使うべきか、ペリーは、むろん調査ずみであった。「プレブル号」のグリン艦長からは、長崎に妙な発音ながらも英語で話すことのできるモレアマ・エイナスカ(森山栄之助)という通訳がいることを聴取していた。が、それは…

関係代名詞節の魅力~1989年のゴンチチ

Abe's plan is to leave intact the current wording - which bans land, sea or air forces -while adding a paragraph making clear the constitutionality of the SDF - which comprises land, sea and air forces. ’Japan Times On Sunday' May 21, 2017…

あなたの町 恋の町~2013年のFM番組の録音を捜す曇りの日

MDに録音したラジオ番組がどっさりあるが、ふだんは聴き返すことがほとんどない。しかし今日、ふと数年前のNHK-FMの深夜にやっていた番組を思い出した。「とことんしゃがれ声重量級」とかいう二週にわたる特集だったと思うけれど、たしか録音したの…

五月、河岸書店で~『ワルツ・フォー・デビ―』はやっぱりCDで持っていたい

詩がそうであるように、世界も理念や概念の乗り物[ヴィークル]ではない。そのことこそが、それらがわたしたちの経験のなかにあるとともに、外在化しているという意味なのであって、世界が何で出来ているかを問うことは、決して交差することのない理念と経験…

デコポンを買った曇りの日~みんなつながっているが人生は有限だということについて

『羨望』や『リオムパ』は想像されたものが、想像したものを破滅に追い込む小説であり、そこには外部の事物に対する恐怖を読み取ることができる。ここで挙げたような擬人化された事物にも、外部の事物を生きた他者とみなす感覚、外部の事物に対する恐怖を見…

ペガサスの朝~五十嵐浩晃は自分のことを「イガラシは…」と言っていた

それにしても、ミリュコーフとトロツキー、この臨時政府の初代外相とソヴィエト政府の初代外相の二人が、ともに亡命地で、いずれも長大なロシア革命史を書いたという事実はまことに興味深い。両者はともに抜群に頭がよく、尊大で、どこか孤独であった。よく…

革命は何人称か~マヤコフスキーと三島由紀夫

住民の大半を占める民衆は、教育水準が低かった。人口の八割ほどを占める農民のうちには字が読めない者も大勢いた。階層的な秩序をなすロシア社会で彼らは経済的に不利な立場にあるだけでなく、二級臣民のような立場にあった。そこから「われわれ」と「あい…

白いハイウェイ~政治における一人称について非政治的に語ってみる

「彼らのなかに飛び込んで、はじめて気づいたのは、SEALDsは個人の集まりであるということだ。そこでは、沖縄出身の子も、東北から来た子も、在日の子も、『わたし』として法案に反対する理由を語っていた」 政治の世界では珍しい、「わたし」を主語とする、…

われらとやつら~『丘の上のバカ』を少し読んだ初夏の日

「私」は「私たち」という、ほんとうはだれのことを指しているのかわからない、抽象的な、甘い囁きの中で、自分を見失ってゆく。それこそが、政治のことばが目指しているほんとうの目標なのである。 「私たち」ではない、「私たち」とは異なる価値観を持った…

植草甚一さんなど読む世代ではなかったが

どうしてこんなものを書いたんだろう。その簡単な理由は、推理小説が戦後第一次の流行現象をしめし、それを推進させた中心人物は、もちろん江戸川乱歩だったが、そんな流行現象の波に乗ったぼくは、何とかして泳ぎ切ってみようという気持ちになったからであ…

来た球を打つだけと長嶋さんは言う~英露独仏その他の読書法という動画

新渡戸、岡倉、斎藤の場合もそうであったが、一般に名人上手と言われる人たちの修行法を調べるのは容易ではない。彼ら自身、そもそも自分がどうやってその域に達したのかをあまり意識していないからだ。 そのため、よく言われるように、一流の人たちはかなら…

Follow Me To The Bookstore~野口英世のシェイクスピア・モギケンの『赤毛のアン』

もちろん、英語教育にも改善すべき点はいくらでもある。意見を言っていただくことはありがたいのだが、一番困るのは、自分の英語が相当なものだと勘違いしている人(しかも、しかるべき地位にいる人)が、公的な場で無責任かつ的外れな意見を述べることだ。 …

パラノイド~ブラック・サバスとソルジェニーツィン

"The seclusion wasn't a question of 'I don't want to be seen'," Ignat replies. "After all the difficulties of writing in the USSR he finally had a chance to deepen his involvement in the major work of his life, The Red Wheel[an epic of the…

身も心も~ロシア革命とたこさんウインナの土曜日

西欧では、はじめに地主や企業家といった有産層の利害を代表する政党がつくられ、そのあとで労働者のための政党がつくられた。この流れはそのまま、議会政治の発達、有権者の拡大、それに国民統合の歴史であった。 ロシアでは順序は逆であった。はじめに地下…

いったい現状を把握している者はいるのだろうか

特徴的であったのは、呼称についての規定である。ロシア軍では将校の階級ごとに敬称に複雑な差がつけられていたが、それらは全て廃止され、今後は「将校さん」と呼ぶことになった。一方で、将校が兵士を「お前」呼ばわりすることは厳禁された。ソヴィエトは…

透明少女~大学教師は〈私〉の顔を見せるのをつつしむべきということについて

〈私〉的なものとは、具体的なイメージをあげるならば、「趣味」や「雑談」のようなものであろう。たとえば、中学や高校の教師が「雑談」と称して、自分の家族や日常生活のことをたれ流して、生徒たちの気を惹こうとしているのが、ぼくは昔から嫌いだった。…

よせばいいのに~北沢書店で買った立川健二さんの本をパラパラ見る雨の夜

ところで、本書の版元である現代書館は、「書籍」を大事に長持ちさせることでは、わが国の出版界でも屈指の存在であろう。ぼくは、自分としては全精力を傾けた小著が、この良心的な出版社によって読者の手に渡されることを心から倖せに思うものである。その…

ダイジェスト本もまたその抜粋のしかたが資料となりうることについて

[…]本屋も数件あって、ほしい本も何冊か手にとってみたのだが、まだ前途に船旅をひかえているということが、荷物をふやすことをためらわせ、ここではクールトンの『中世の精神』を買っただけで、ずらりとならんでいた『生きた思想』双書は一冊も買わなかっ…

あきらめ節~研究対象の次数とライヴ至上主義

職業としての学問を考えるようになったとき、その学問とは近代ヨーロッパ思想史であり、副次的に、当時の言葉では社会科学方法論、いま自分では思想の社会学とよんでいるものであった。社会科学方法論というのは、岩波文庫にウェーバーの「客観性」論が、『…

平日が戻ってくる~昭和史やフロイトで終わるGW

水野 さきほど近代兵器として、飛行機、潜水艦、タンクなどが挙がりましたが、これらを動かすには石炭よりも石油のほうが効率がいい。特に飛行機は、石炭では重くて飛べません。つまり石油を手に入れないと戦争ができない時代になったのです。第二次大戦でソ…

私設研究室を物置に移す夢を見た

出口 たしかに、総力戦というものがどういうものかを理解していたら、軍縮問題もあれほどの大騒ぎにならなかったでしょうね。総力戦とは、国の全ての力を注ぎ込む戦いですから、最後はGDPが大きい方が勝つ。もし軍縮で一定の歯止めをかけなければ、圧倒的…

quandaryは「板ばさみ」~早口言葉で学ぶ英語発音など

quandary ▶ noun (pl. quandaries) a state of perplexity or uncertainty over what to do in a difficult situation: ■a difficult situation: a practical dilemma: Oxford Dictionary of English 作者: Angus Stevenson 出版社/メーカー: Oxford Univers…

ベサメ・ムーチョ~「人格者」をどう訳すか

magnanimous ▶adjective generous or forgiving, especially towards a rival or less powerful person: Oxford Dictionary of English 作者: Angus Stevenson 出版社/メーカー: Oxford University Press, USA 発売日: 2010/08/01 メディア: ハードカバー 購…