瀬川洋「恋はもうたくさん」
「わたくしが日本公債を引き受けるのは、単に利札を勘定するためではない。日本がロシアと戦争をしているからである。そしてそのために入用な金であるからである。わたくしたちはユダヤ人である。わたくしたちユダヤ人の仲間はたくさんロシアにいる。しかるに、そのロシアはわたくしたちの同胞をいじめることが甚だしい。ロシア帝政は実にユダヤ人虐殺史である。どうかユダヤ人を虐殺しないでくれというて、たびたびわたくしたちはロシアに金を貸した。しかるに金を借りてしまうと、また虐殺をはじめる。……ロシア帝政のなくなることを祈っている。このとき、日本はロシアと戦いをはじめた。日本が勝ってくれれば、ロシアにきっと革命が起こるにちがいない。そして、帝政が葬られるにちがいない。わたくしはそれを願うがゆえに、あえて日本に金を貸すことを引き受けるのである。」(東京朝日新聞経済部編『国際資本戦』四六ページ)
日露戦争当時の日本が戦費に困って、ロンドンやニューヨークで起債した話。是清さんはこういう仕事のときが真骨頂なんじゃないかな。
しかし、政治全体が〈経済政策〉化しているこんにちでは、「財政家」なんて言葉はもう死語か。厳密にいうと銀行の業務を指揮する場合は「財政家」ではなく「金融家」なのだろうし。
いずれにしても是清さんは融通と機転の人で、政治にかかわるとしても政策系の政治の人だな。思想系の政治に向いた人じゃない。
関係ないけど、ダイナマイツはいいよ。↓ヒロシはいい感じで歳をとり、この円熟味。