嘆きの夜曲
女性たちは、クラブ、キャバレー、料亭は勿論のこと、 ススキノで働く総ての人は教養と情と色気があった。遊び過ぎて財布が空っぽになれば、そっと車代をママが手渡してくれた。今はそんな粋な人はいない。夕闇迫るとネオンが輝き、今宵も素敵な出会いを夢見て、夜の蝶(当時のホステスの仮称)がそぼ降る小雨のなか、車から降り際、蛇の目傘を差し、裾を摘み、色っぽく歩く姿はどの方向から眺めても魅惑的であった。
この手の世界は(たいそう魅惑的ではあるが、個人的には)苦手だ。
酒を飲んでいた時も、粋な飲み方にはまるっきり縁がなくて、はしゃいで、わけわからなくなって、べろんべろんに泥酔している、の繰り返し。あれはあれで人生勉強でなくもなかったが、夜の蝶とか全然興味なくて、部屋で缶ビール、というのがいちばん気楽で好きだった。
そもそも、札幌にいたときも、すすきの、数えるほどしか行ったことがない。ほとんどは寮の談話室で駄法螺を吹きながら飲んでいた。
おととい、BSフジの『プライムニュース』、告知が、気鋭の思想史家がうんぬん、となっていたので、どなたが出るのかと思っていたら、片山杜秀先生(ともう一人は先崎さんという若い方)。
うごく片山さんをあんなに見たのは初めてだ、という人は多いんじゃないだろうか。長髪をゆらゆらさせながらしきりに上方を見て、何とも落ち着かなげで、講義とかどんな感じでやってらっしゃるのか(思えば、これはぼくも似たようなことを言われたことがある)。けど、話題の泉みたいな人だから、人気あるんだろうな。
きっと片山先生も、夜遊びとかからきし苦手で、奥さんのてのひらの上で転がされながら、山のような書物と音盤に明け暮れるのが生きがいなのでは、と拝察したことではあった。
今朝は未明から勉強して、7時ごろ疲れて仮眠した。再放送の『クラシックカフェ』、チャイコフスキーの「悲愴」が夢と混ざり合って、なんかすごかった。CDもってないかこれ。
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/バレエ組曲「くるみ割り人形」
- アーティスト: ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団カラヤン(ヘルベルト・フォン),チャイコフスキー,カラヤン(ヘルベルト・フォン),ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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