スコーピオン
戦前においては、東京帝国大学の農学部は医学部より難しかった。農学部だけで、東大のほかのキャンパスを合わせたのと同じくらいの広さがありました。農学部ではありませんが、柳田国男ものちの東大法学部で農政学を専攻しています。
一定の感慨を覚える一節。本は返却してしまったが、拾っておいた。
柳田の選集は、古本屋で小遣いをはたいて買いこんで、ふたつ目の大学へ行くとき持って行ったけれど、読むことはなく、大学院進学が決まった時、同級生にもらってもらった。いま彼は東京の大学で教授をしているはずだが、もう音信もないので、くわしいことは知らない。
二回目の大学進学のとき、実は、どこかの農学部の農経にでも引っかかればいいと思っていた。そうならずに、いわゆる人文系へ進めたのは、よかったとも言えるし、あっち方面へ行っていたら、それなりに活路があったのではと思わなくもない。よくわからない。たしか、そっちへ行ったら読もうと、マルクス=エンゲルスの英訳を出して眺めていた。
柳田の選集を買ったのは、めったに行かない帯広の古本屋だったような気がする。帯広、こないだ、ひさびさ行った。雨だった。藤丸デパートの7階で、古本市をやっているというので。CDも少しあってハンク・モブレーの『ソウル・ステーション』が700円。おおよろこびで買ってきた。他に、サン・テグジュペリの『人間の大地』の原書、400円。フランス語は読めないが、この一冊を読めるようになるのを目標に、やってみるのもいい(とすくなくともその時は思った)。他に橋本治、野坂昭如など。
すぐそばの六花亭の喫茶室でアイスコーヒーを飲みながら、本を拡げて、80年代の終わりからずいぶん時が経った、と感ずる。