俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

岡林信康「チューリップのアップリケ」

格差社会」という言葉を初めて耳にしたのは、あれは何年前でしょうかね。札幌でセルビア文学のセミナーがあって、どうしても聴きたくて出かけていって、その帰りの特急列車のなかで読んだ週刊誌で、初めて知ったんじゃないのかな。上場企業の総合職っぽいお洒落なサラリーマン、OLがさっそうと出勤する道端で、無精ひげの若者がコンビニで買ったおにぎりを食べながらパチンコ屋の開店時間を待っている…たしかそんな書き出しの記事でした。

二年前には、若い人が講義室で小林多喜二蟹工船』を読んでいて腰を抜かすほどびっくりしたんですが、あの時も、その子が特に変わった奴だからではなく、格差の深まりとともに、世間では『蟹工船』がじわじわと読まれだしているんだ、ということを知りました。

だったらコレも聴かなきゃウソでしょう。岡林信康「チューリップのアップリケ」。この歌のお父さんは靴職人。朝早くから靴をトントン叩いているお父さんは、どう見たって怠惰な道楽者ではありません。お父さんはあんなに一生懸命働いているのに、なぜうちの家にはお金がないんだろう…。社会的不平等への、これ以上ないまっすぐな抗議です。

昨年の後半からはさらに状況は悪くなって、「働いても働いても楽にならない」から「働く場所さえない」になりつつあります。一年前の新年には予想もしなかったことでした。TVでは「年越し派遣村」のニュース。住むとこないなら実家に帰ればいいじゃん、などと考えるのはNGです。帰る場所のない人がこんなにいることを改めて知りました。