ブルーハーツ「泣かないで恋人よ」

ゆったりとしたラテンのリズムを刻むドラム。スライドギターにアコギ。ピアノにアコーディオン。そしてまっすぐに伸びるヒロトの声。生きていくうえで、遅すぎることなんて、何ひとつありはしないのだ、というメッセージソングです。たまに聴きたくなりますね。

真島昌利さんの詞が冴えを見せます。キーワードは「諦め」。中島義道さんぽい言い方になりますが、大人になる過程で、人は何度周囲から、もう諦めろ、という暗黙の（時には明示的な）メッセージを受け取ることでしょう。もう諦めろ、諦めて、諦めて、諦め抜いて、俺たちのようになれ、と。ひょっとしてほかならぬこの僕も、いつのまにかそんなメッセージを全身から発している不純な大人の一人なのかも。そこにはっきりと「否」をつきつける我らがブルーハーツ。彼らは歌うのです。「あきらめきれぬ事があるなら　それはきっといいことだ」と。

それにしても、このリズムとやさしい旋律。「泣かないで　恋人よ　何もかもうまく行く」というリフレインが心に沁みます。今年も何もできないまま暮れてゆきます。でも、あきらめるのは、来年でも、再来年でも遅くない。そう思いませんか、皆の衆。