俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

椎名林檎×斉藤ネコ「枯葉」~「歌舞伎町の女王」

これ、通して観るひまがないんですね。たしか5月の連休あたりに通して観たきり。椎名林檎さんのDVD『第一回林檎班大会の模様』。以前は一度、この中の「灰色の瞳」(長谷川きよしさんとのデュエット)について書きました。で、机の上に置きっぱなしだったんです。ジャケ写は、林檎さんの凛とした立ち姿と、ちょっとうつむいてマイクに向う顔のコラージュ。なんか写真見てるだけで音が聞こえてきそうで、今日は思わずPCにセットしてあちこち飛ばし聴き。

何といっても出だしですね。マタタビ・オーケストラを率いる斉藤ネコさんのヴァイオリンに乗って林檎さんが下手から登場。これはシャンソン「枯葉」のヴァースの部分ですね。以前も書いたとおり、英詞がつけられたときにはこの部分には詞がつけられなかった、というあの部分。林檎さんの低い声とフランス語の響きの相性が絶妙です。と、幕が開き、ドラムの音とともに始まるのは「歌舞伎町の女王」のオーケストラ版。スタッカートの利いた壮麗なアレンジです。わーっと客席から歓声が上がります。この瞬間のスリリングさがなんとも応えられません。

椎名林檎さん。ずっと昔、『ミュージック・マガジン』のうしろのほうに、東芝EMIのディレクターの某氏が自社のアーティストについて好き放題に書くコラム風の広告があったんですが、そこで僕ははじめて「椎名林檎」という不思議な名前のアーティストについて知りました。現物が手元にないので確認できないんですが「川本真琴よりもいい線行くかもしれない」といった意味のことが書いてあって、へえ、と思ったのを憶えています。それからすぐ、FMや街の有線で「歌舞伎町の女王」を耳にするようになりました。ファーストアルバムは当然のごとく購入。まだ自分はロックのリスナーだと思っていた僕にとってはごく自然のことでしたが、知人などが「えっ?あなたが椎名林檎を?」といったいぶかり方をするので、僕はこういう音楽を聴く人には見えないのかな、などと思ったことでした。たしかに、それ以降アルバムを買わなくなってしまって、いつの間にか世の中で流行っているロックのことには疎くなってしまいましたね。歳のせいもあるし、環境のせいもあるし、まあいろいろあって。

あれから10年は経ったのかな?秋の静かな夜、PCの中で林檎さんがマタタビ・オーケストラをバックに「歌舞伎町の女王」を歌ってます。歌詞カードはないけど、うん、これは全部歌えます。もっと大事なことはきれいに忘れちゃったのにね。この10年って何だったんだろう。