Round About Midnight~よき床屋政談は経済と世界史を連動させる
[…]しかし、日本が支払った代価は大きなものでした。輸出産業が直撃を受け、関連企業にも影響が及んで円高不況に突入します。
日銀は、国内市場の活性化(内需拡大)のため金利を引き下げますが、利子のつかなくなった銀行預金が引き下ろされて株式や土地に投下されました。バブル経済の始まりです。
これはいい本だ。視野が広い。手あかのついた概念が、歴史的裏付けとともに洗い直され、清新さをとりもどす。バブル経済ということばは「景気がよかったころ」の意味で決まり文句のように使われて、いい歳をした人までが「高度成長」と混同していたりするが、あくまで1985年のプラザ合意→円高誘導→輸出産業に打撃→内需刺激のための利下げ→株・不動産への資金の集中による資産インフレのことを指す。この程度のことは押さえておきたい。これを踏まえていれば、同じ床屋政談でも最強の床屋政談ができるだろう。
こんな個所も悪くない。
民主党のウィルソン大統領はグローバリズムの理想を信じ、連邦準備制度理事会(FRB)設立を認可するなど、ニューヨークの金融資本と強く結びついていました。はじめはアメリカの伝統的なモンロー主義に従って中立を宣言します。しかし、連合国の一角であったロシアで革命が起こり、ドイツと休戦します。余力のできたドイツ軍がフランスに攻勢をかけたため、連合国の勝利が揺らぎます。
ウィルソンが参戦を決意したのはこの時です。[…]
とか、引用しているときりがない。ギリシアに端を発するユーロの危機のことも、これを読むとよくわかる。紙幣の起源も極めて具体的。予備校の先生らしい、幅広い勉強ぶりとわかりやすい語り口がよく出ている。
大学で教科書として使うにはちょっと…だろうけど、講義の〈脱線〉のネタを仕入れるにはもってこいの本だ。概して、講義なり授業なりの〈脱線〉には、教える側の知性の幅がにじみ出る。歴史を経済の軸で理解するというのは成熟した上質の知性のみがなしうることかもしれないが、この本でその一端は垣間見ることができる。もう教壇に立つ目算もない自分だが、こういうものは読む。アタマを錆びつかせたらそれまでだ。読んで損はないんじゃないか。(注記:アマゾンでは辛いレビューが目立つが、いろいろ難がある点を割り引いても、役立つ部分は多いと思う)。
今日もマイルスのプラグド・ニッケル。この時期でも北海道はまだ寒いが、室温はだいぶ上がった。その空気をふるわせてわがJBLが鳴る。トニー・ウィリアムズのタイコが圧巻。これを眠らせておいちゃあ音楽の神様に悪いので、しばらくは毎日鳴らそう。
これから語学。とにかく英語とロシア語、あまり欲張らず、現状維持プラスアルファくらいを目指して。
Highlights From Plugged Nickel
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