悲しきサルタン/スルタンガリエフの夢
佐藤 […]ロシア革命というのはいい加減な革命で、レーニンは革命の潜在力として、中央アジアやコーカサスのイスラム少数民族に目をつけた。彼らはロシア帝国に抑圧されていた「被抑圧民族」である。だからイスラム教徒であって同時に共産主義者であることが可能な「ムスリム・コミュニスト(イスラム教共産主義者)」だ、という奇妙な理論を立てたのです。資本主義の被抑圧国における資本家と労働者の対立に関しては、二次的な対立にしてごまかしました。
正教国と戦っていた彼らに、これは西の異教徒に対する聖戦だといって、(西)トルキスタンと手を組んだ。そこで困ったことが起きました。イスラム教徒の力が強くなりすぎて 、ソ連支配に反乱する「バスマチ運動」(バスマチとは「襲撃者」「急襲者」を意味するテュルク系の言葉)が拡大し、中央アジアを席巻しそうになったのです。
宮家 現在にまで通ずる話ですね。
佐藤 そこでソ連当局が、カザフ人とキルギス人に対して、「お前たちはsの発音が少しずつ違うだろう? だから別の民族なんだ。それなら民族ごとに国をもったほうがいい」と、現在のカザフスタンとキルギスを人工的につくった。一九二〇年代の終わりから三〇年代の初めに、スターリンが無理やり国境線を引いて民族を分割したのです。これが「民族別境界画定」。[…]
一日だけ残っていた夏。去年もこんな日があった。朝、川の見える方へ歩いて行った。
だいぶ水は引いたような気はするが、岸辺の柳が増水でなぎ倒されたようになっている。
ちょうど中学生の登校時間。街をぐるっと回って、帰宅した。
上記の本も、明日は返却してしまおう。
おとといも書いたが、本当に〈機微に触れる〉話がどれくらいなされているか、割り引いて読む必要はある。上記の部分も、外務省勤務者にとってはイロハのイのような初歩なのだろう。ただ、宮家氏が自らを「中東屋」と呼んでいることからもわかるとおり、外交官であった彼らは、担当地域についての語学者・研究者でもあり、その自負は相当なものだ。その部分を読まなくてはならないだろう。
ぼくはこっち方面の専門には行かなかったけれど、二度目に大学へ行く前の年には帯広の書店で↓を買って持っていた。ただ、それを読みこなす学力が自分にないのが痛いほどわかった。
スルタンガリエフの夢―イスラム世界とロシア革命 (岩波現代文庫)
- 作者: 山内昌之
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スルタンガリエフの夢―イスラム世界とロシア革命 (新しい世界史)
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この本はずっと売らずに書棚にあったけれど、今は書庫。六年前、研究室をたたんで以来、ぼくがもっぱらやっているのは語学の鍛えなおし兼文学畑の基本文献のやっつけであり、こちらまでは手が回っていない。ただ、この本のことは決して忘れたことがない。ソ連崩壊前後のあの地域の研究がはらんでいた熱気を、この本も分かち持っている。
あれから何年経ったのか。ほんの少し外国語が出来るようになっただけの、とっちゃん坊やのままの自分。白髪がひどい。短パン姿はたぶん今日で終わりだろう。
Dire Straits - Sultans Of Swing