風の又三郎
「みなさん、長い夏のお休みはおもしろかったですね。みなさんは朝から水泳ぎもできたし、林の中で鷹にも負けないくらい高く叫んだり、またにいさんの草刈りについて上の野原へ行ったりしたでしょう。けれどももうきのうで休みは終わりました。これからは第二学期で秋です。むかしから秋はいちばんからだもこころもひきしまって、勉強のできる時だといってあるのです。ですから、みなさんもきょうからまたいっしょにしっかり勉強しましょう。それからこのお休みの間にみなさんのお友だちが一人ふえました。それはそこにいる高田さんです。そのかたのおとうさんはこんど会社のご用で上の野原の入り口へおいでになっていられるのです。高田さんはいままでは北海道の学校におられたのですが、きょうからみなさんのお友だちになるのですから、みなさんは学校で勉強のときも、また栗拾いや魚とりに行くときも、高田さんをさそうようにしなければなりません。わかりましたか。わかった人は手を上げてごらんなさい。」
風の又三郎-宮沢賢治童話集2-(新装版) (講談社青い鳥文庫)
- 作者: 宮沢賢治,太田大八
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/31
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北海道からやってきた、ほとんど外国からの転校生として描かれる高田三郎=風の又三郎。秋のひと時を子供らはこの変わった転校生と野山を駆け回って過ごすが、風の強い日曜が過ぎて子供らが登校すると、もう三郎はいない。
三郎の父はモリブデンを掘りに来た鉱山技師。採掘予定だったモリブデンには当分手をつけないことになり、会社から父親に帰任を命ずる電報が来たのだという。
ふと確かめたくてページを繰ってみた。高田三郎は、北海道に帰ったのだろうか。はっきり北海道とは書かれていないが、そこにはお母さんも暮らしているというから、やはり北海道に帰ったのか。
今日に至るも半外国であるところの、わが北海道。