みずがめ座の時代
東北の某県庁所在地。たった二日では隅々までは歩くことはできず、かと言って、もう一泊増やすと体力的にきつく、千歳前泊を含めて3泊4日の行程。
で、メインの目的は恩師の最終講義でした。なんとなく、これを逃すとこの二つ目の母校とも疎遠になり、何より、今やっている仕事というか勉強というか読書というかの原点がどんどんあいまいになってゆく、そもそも自分は何で(なぜ、いかにして)この道に入ったのか…という気持ちに突き動かされ、行ってきました。恩師が研究を志すきっかけなど、何度か聞いたことあったかもしれませんが、やっぱり行ってよかったですね。ロシアのものをやっていても、研究対象となる作家はヨーロッパのあらゆるものを読んでいる。だから、時間はかかっても、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスなどのものを読まなければ、とうてい作家の全体像の解明はおぼつかない、という点に、おおいに意を強くして帰ってきました。
大学によっては、露文の修士課程に入ったら、向こう二年間はロシアに関係しない本は読まないように、と釘を刺されるそうで、一時期でもそうしなければ専門家として立っていくだけの深い学識は身につかない、という趣旨だと思うのですが、わが恩師は、ぼくがドイツ語も少しかじっている、というと「それはいい」と激賞してくれるような人で、そのおおらかさがぼくには大いに救いでした。もっとも途中から、このままじゃ大学院、行けないや、と悟ってドイツ語の授業はすべて捨て、英語とロシア語に全力投球しましたけれど。あの頃お世話になったドイツ語の先生はすべて定年で会えず、アメリカ文学の師匠とは少し話し込む時間がありました。
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旅から帰ってきて、最初に読んだのがジョージ・オーウェル。『スペインで戦うこと』というペーパーバック。ただ、こんなタイトル聞いたことなかったし、読んでいたら一度読んだことのある記述が出て来るし、要はむかし邦訳で読んだ『カタロニア賛歌』の抜粋本なのねこれ。解説もなく、編集も行き届いたものではないと感じましたが、編集された本とか縮約版とかは、その編集なり抜粋なりのありかた自体に編集者の思想があらわれていて、それはそれで立派な思想史の資料たりうる、ということもあります。何より、読んでいて楽しかった。
外は雪。今年の北海道の冬は10回以上低気圧が到来した、と旅の宿のニュースで聞きました。でもさっきまでは雨で、冬の出口にさしかかりつつある、そんな3月10日です。
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