秋吉敏子「朝日の如くさわやかに」
2月12日土曜は、自宅にずっといたのに、なんだか喫茶店を何軒かはしごしたような気分の一日でした。
朝日新聞の別刷り「Be」ではガロの「学生街の喫茶店」が取り上げられ、この1973年の大ヒットの舞台設定となっている<学生街>の<喫茶店>はどこなのか?という探訪が行われています。作詞の山上路夫氏は、詞を書くにあたり参考にした店はない、聴く人の心に浮かぶ店があれば、すべて正解でかまわない、とさばけた態度をお見せになっていますが、それでは記事にならないと見えて、紙面には御茶ノ水駅近くの画廊喫茶「ミロ」というところの店内の写真が。日本のカルチェラタンといわれた御茶ノ水界隈がこの歌の舞台だ、と考える人がいたって、それは不思議ではありません。僕自身はそんな都会の真ん中の大学にかよったことがなかったけれど、初めて入った大学の付近の私鉄駅前商店街にも、とても小さな<学生街>があって、喫茶店はどこも学生でにぎやかでした。英語の授業で名物教授が、「カルチェラタンは英語で言うとラテン・クオーターだ。学生たちがラテン語で会話していたからそう呼ばれたのだ」と教えてくれました。僕が通っていたのはジャズ喫茶だけれど、きっとボブ・デラン(ディラン?)がかかる店というのもあったでしょうね。
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午後8時からはBSハイヴィジョンで秋吉敏子の上海でのコンサートの模様がずっと流れていました。不勉強で、というのはこのことで、この高名な日本人ピアニストのCDを僕は一枚も持っていないのです。途中流れたインタヴュー映像で三木敏吾さんが、「秋吉さんはもともとビバッパーで…」とお話になっていたので、ああ年齢から言ってもそうなんだろうな…と初めて知ったような次第。渡辺貞夫さんによると、JATP(ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック)で来日したジョン・ルイスの目に留まり、アメリカデビューした、とその程度のことも知りませんでした。上海でのコンサートも見ごたえありましたが、秋吉さんのピアノ、1950年代から順を追って聴きたい気になりました。
CDをすぐ注文したいところですが、動画サイトを検索すると、いろいろ観られます。以下のような曲が見つかりました。紛れもない、バド・パウエル・マナーの、叙情的ながらリズム感豊かなピアノが聴けます。曲はおなじみの「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」。邦題が「朝日のようにさわやかに」ではなく「朝日の<如く>さわやかに」というところがいかにも。こういうのがかかるジャズ喫茶(のある学生街)って近所にありません。そこは地理的に遠いだけでなく、懐かしくて訪ねていったとしても、もう存在しないかも。自分でアイスコーヒー淹れて、しばらく毎日これ聴きましょう。