俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

岩崎宏美「女優」

岩崎宏美さんの三枚組ベスト『コンプリート・シングルズ』は、もうこれは家宝ですね。これなしには夜も日も明けない(は大げさか)という状態です。

ただし、僕がいつも聴いているのは三枚組のうち一枚目だけ。デビュー曲「二重唱(デュエット)」から「女優」までの全20曲です。いかにもおませなデビュー曲から、数々のヒットを経て、成熟した魅力的な女性へと成長してゆく宏美さんのあしどりがよくわかります。

で、ラストの「女優」から行きましょうか。これ、大好きなんですよね。作曲は筒美京平先生。イージーリスニングとディスコ・サウンドを研究し尽くした成果が、これ、なんでしょうね。はねるビートに流麗なストリングス。ぜいたくな都会のサウンドです。そして、なかにし礼さんの作詞がまたセクシー。「明るすぎるわモンシェリ 少しライトを弱めて 時々外を通る 車の光りが素敵」。好意を寄せ合う男女がふいに二人きりになり、唐突なラヴ・シーンがやってくる、そんな一瞬でしょうか。こういうの慣れてないのよ、という感じの告白が文字通り「素敵」です。ラヴ・シーンってのも、まあ「場数」の問題ですからね。手順を間違えないかしら、自信がなくて恥ずかしいわ、という初々しさは却って魅力的だなあ。「嫌われないかしら 心配なんです 見られるなら 一番きれいな私を あなただけに見られたい」。どうです、この恋愛に対するマジメさ。おませの極致みたいな「二重唱」で幕を開けたDISC1が、どちらかといえば奥手な大人の女性の心情を繊細に歌う「女優」で締めくくられる、というところが、ほんとうに宏美さんの歌手としての成熟振りを物語ります。で、カーステレオは再び一曲目の「二重唱」へ…また繰り返し聴いちゃうんですね。そんなこんなで、なかなかDISC2にたどり着けないでいます。