俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

太田裕美「さらばシベリア鉄道」

というわけで、太田裕美さんの曲を取り上げてきた今週。締めくくりはやっぱりこれで行きましょうかね。

松本隆作詞 大滝詠一作曲 萩田光雄編曲 「さらばシベリア鉄道」

1980年発売といいますから、大滝さん自身のヴァージョンよりこっちが先なんですかね。これ、チャンと詞を読むと、別れを告げて旅立った女の子と、突然恋人に去られた男の子の掛け合いです。つまり「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」と同趣向、ということになります。誰でも心に冬を隠しているというけれど、それにしてもあなたは冷たすぎるのではないか。別れの理由をそのように告げる手紙を読み終えて、切手を見ると、そこには小さなロシア語の文字。照れて愛という言葉を口に出せない男の子と、まなざしを読むことのできない女の子のすれ違いからこんなことが起こってしまったようです。なぜまなざしを読めないかというと「近視」だから、というのがびっくり。今回歌詞カードをちゃんと読んで初めて知りました。

細かく字面を追えばそうなるんですが、しかしなんといっても、シベリア鉄道に材を取ったという点と、いかにもロシア民謡に想を得たという感じの曲調、これに尽きますね。女の子をのせたシベリア鉄道が「行き先さえない明日」に向かって、厳冬のロシアの大地を突っ切ってゆきます。男の子は心の中でひそかに「12月の旅人」に呼びかけ、「いつまでも待っている」と伝言を託すのです。

太田裕美 ゴールデン☆ベスト コンプリート・シングル・コレクション』(二枚組)の一枚目の一九曲目。この辺まで来ると、もうおなかいっぱいですね。今回取り上げた曲たちのほかにも「しあわせ未満」「恋愛遊戯」「失恋魔術師」「ドール」と、懐かしい曲がいっぱい。もう一回はじめから聴こうかな。そのうちまた取り上げますね。