俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

甲斐バンド「バス通り」

今朝、定食屋さんで、しょうが焼き定食を注文して新聞を読んでいたら、甲斐バンドが最後のコンサート・ツアーを行う、との報道がありました。

先日、TVでも甲斐さんが出てきて一曲歌って、そんな話をしてましたから知ってましたけどね。観たいけど、僕の住んでる地方には来ないし、都合をつけてどこかの会場へ行く、というのもちょっと無理です。

とにかく、甲斐バンドに対する僕らの世代の男の子の気持ちって、アンビヴァレントなんですね。僕らの世代の男の子、などと一般化するのが無理ならば、少なくとも、僕自身の気持ち。最初はとにかく、甲斐よしひろってアイドル歌手みたいな色男で、女の子にきゃあきゃあ騒がれて、こんなのグループ・サウンズじゃないか、といった気持ちでしたが、その一方で、楽曲自体には抗しがたい魅力がありました。とにかくその暗さ。「裏切りの街角」のなんともいえない古臭いイントロのフレーズとか、「かりそめのスイング」の寒々とした不景気な歌詞とか…。

時代の空気は少しずつ動いていて、歌謡曲っぽいから聴いてはいけない、という変な不文律は、高校に入ったときにはすでに無効になっていました。他の中学から来た男の子達はふつうに、「甲斐バンドいいよね」と言っていたと思います。ヒットチャートの上位にはチャー、原田真二ゴダイゴ、ツイスト…歌謡曲と新しい音楽の垣根はもうないも同然でした。

甲斐バンドのその後を考えると、デビュー曲の「バス通り」はかなりフォークっぽい仕上がりです。学園生活の一こまを切り取ってきたような詞に、哀愁のメロディ、マンドリンが印象的な編曲。といっても他愛のない恋の歌ではなく、最後の一節が鮮烈。

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誓った言葉はどこにもない

日が暮れるのも忘れて歩いた バス通り

ああ、ここにもくっきりと、「裏切り」が刻印されています。今夜はエンドレスでリピートしましょう、「バス通り」。