モーメンツ・ノーティス
Pharoah Sanders - Moments Notice - YouTube
1980年に大学生になった時のことをずっと回想していたら、いつの間にか秋でした。
80年代って、去年のブームだったのですね。朝ドラの影響で。そうだったか…
ただ、ぼくはドラマに熱中するたちではないので、あの朝ドラも終わりころ数回見て、なるほどこれが話題の…と納得し、最終回で主人公たちがトンネルを走り抜けて海に出るシーンには少しジーンとした反面、でもこのドラマの表象する80年代って、ぼくの憶えている80年代とは別ものだなあ…と思ったりもしました。だから、ぼくがこのところ80年代のことばかり回想していた、というのはそのドラマの影響というわけでもありません。
たびたび書きますが、個人的にはジャズ喫茶通いの10年だったのですよね。初めて通ったジャズ喫茶で、よくかかっていた記憶があるのはこれ。ジョン・コルトレーンの「モーメンツ・ノーティス」にヴォーカルがのっかったファラオ・サンダースの一曲。といっても、コルトレーンの方を知るのはそのずっと後で、先にこちらをよく耳にしていました。じつは、最近、「あれは誰によるカヴァーだったのかなあ」と思ってグーグルにお伺いを立て、この動画を発見。当時聴いていたのはこの曲で間違いないと思います。
People around the world love Coltrane's music.といった歌詞、涼やかなビブラフォンが曲調に合っていて、何も知らない大学一年生をジャズにいざなってくれました。いきなりコルトレーンそのものを大音量で浴びせられたら、18歳のぼくはたじろいで、ジャズ喫茶になど二度と足が向かなかった可能性大です。あの店で入門的なものをたくさん聴いたおかげで、その後、他の街へ越した時も、もっと個性の強烈なジャズ喫茶へ通う素地ができました。音楽、面白いなあ、という自然な感激がありましたね。この曲を聴くと、三十数年の時を飛び越えて、当時の空気感がよみがえってきます。
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最初の大学に通ったあの街に、もう行く機会はありません。でも今はグーグルのストリートビューという便利な機能があって、街の景色を居ながらにして眺めることができるのですね。すっかり小奇麗になった町並みに少しがっかりし、それでも、せっせと通ったジャズ喫茶がそのままあることを確認。なじみだった定食屋、居酒屋なども見つかって、何となく安心しました。
あのころは街燈も少なくて夜道が暗く、暗がりにアダルト本の自販機がひっそりあったりしたのを憶えています。さすがにそんなものはもうないでしょうが、そうした、もはや顧みられることのないものたちの中にこそ、この自分の80年代があるように思います。