俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

チェリッシュ「若草の髪かざり」

これが流行ったとき、僕、小学生でしたけど、ひどく濃厚なものを聴いている気がして、無性に恥ずかしかったのを憶えています。

詞:阿久悠  作編曲:馬飼野俊一 チェリッシュ「若草の髪かざり」

フォークソングのムーヴメントの中から出てきたんだけれど、結局歌謡曲のフィールドで活動することになったアーティストの代表例、とか、今になってそんな風に冷静に語れるんですが、当時、若さムンムンのえっちゃんと松崎さんがこの曲を歌う姿は、えらく刺激的でしたね。オカリナが奏でる素朴なイントロから、いきなり「あなたが髪に 結んでくれた 芽生えたばかりの草の 髪飾り」と入ってきますが、もうこの段階で、草いきれと恋心でむせ返るような切なさ。芽生えたばかりの草であなたが編んでくれた髪飾りをつけて、このジーンズの普段着をウエディングドレスだと思って、二人は、いつか、そっと…うわあ、エロい!

若草の芽生えが恋の芽生えに重ねあわされ、言葉による告白を経ずにいつしか結ばれる若い恋人どうしの姿が描き出される、阿久悠の手腕が冴え渡る一曲です。女性ヴォーカルのうしろでハンサムな若者がギターを弾いているという絵柄がまたなんとも絵になってました。ベスト盤はいい曲ぞろいですが、この曲はついリピートして聴き返してしまう濃さをもっています。1973年1月、激動の昭和40年代の末期。このころから若者は、社会正義ではなくて個人の幸福の追求を人生の第一目標とするようになった、と、そんな粗雑なくくり方をしてはその世代に失礼ですが、なんというか、そんな時代の空気がよくあらわれた佳曲です。