俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ザ・エン歌~「洋書を一冊読み切る」体験について相変わらずあれこれ

では、「一冊を読み切る」ために、最初の1冊にはどのような本を選べばいいのだろうか。ポイントはずばり、以下の3つ。「内容を知っている本」「薄い本」「簡単な本」である。

 

大学生になったら洋書を読もう―楽しみながら英語力アップ!

大学生になったら洋書を読もう―楽しみながら英語力アップ!

 

  これは大事なことで、すでに内容を知っている本を読んで外国語の読書入門をする、というのはほとんど王道と言っていいくらいのものだ。だから、誰でも内容を知っている有名な文学作品をやさしく書き改めたものを読む、というのは少しも悪いことではない。

 たとえば、メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』は、英文科の卒論の定番と言っていい超有名作品だけれど、英語自体は初心者にはちょっときつい。いや、少し身を入れれば、このレベルは英文学の中でもそんなに難しい部類じゃないが、若い人が英語学習の道具として使うなら、映画版のノヴェライズ本だって悪いことはない。「多読」のための「多読」はレベル向上につながらない、という批判は一理あって、その通りなのだが、この種の通俗本を読んでいるうち、おのずからもっと本格的なものを読みたくなるんじゃないか。

 

Frankenstein: Novelization

Frankenstein: Novelization

 

 いや、『フランケンシュタイン』映画版のノヴェライズ本、というのも古い話で、あの映画が、もう二十数年前なんだね。ノヴェライズ本は、たしかに持ってて、ひょっとしたら資料的価値もあるかぐらいに思って取っておいてあったつもりで、今これを書くため探したのだが、置いてあった部屋にない。なので、あくまで「だろう」という話なのではあるけれど、ノヴェライズ本は易しい。それで『フランケンシュタイン』を読んだつもりになるのはNGだが、これだって若い人が読み切ればかなりの自信になるはずだ。

 高校生の時代、というのが、自分史(いやな言葉だね)のなかでは暗黒時代をなしていて、こうしたペイパーバックどころか、田舎の本屋には南雲堂の英和対訳シリーズすらおいてなかった。自らそういうものを探し求めてどこかに行くという機会もなかった。

 外国語を読むというのも慣れの側面がけっこう大きい。ふだんからまとまった量の英文を読む習慣のない人が、年数回の英語の有名テストのたぐいを受けに行って、読解問題の量に圧倒されるというのはまったく当然のことだ。入試の英語となればなおさらだ。日ごろから英語を読んでいる人は、もう圧倒的に強い。

 そしてまとまった量の英文を読めるかどうかは、そんなにたいしたことから決まるわけじゃない。高校を出るか出ないくらいでは、本当に英文学をバリバリ読めるような人はほんの少数で、あとは上記のような通俗的なペイパーバックを数冊、部分的にでも読んだことがあるか、というくらいの差しかないと思われる。南雲堂の対訳本を5,6冊読んでいれば、もうたいしたもんだろう。

 そしてこれは、試験の有利不利だけですまず、その後もずっとついて回る。たとえば、国際政治学をやる、生態学や人類学をやる、物理や化学をやる、細菌学や伝染病の研究者になる、どの場合でも、英語の本が怖くないという自然な自信は(間違えないでほしい、けっして十分条件ではないのだが)、大きな優位になる。

 だから、都会の大学を出て田舎に赴任する英語の先生は、なるべく自分でもこういうものを読む習慣を身につけておいて、それを若い人に伝えることをしてくれたらいいと思う。力説する必要はないから、ほのめかすぐらいでもいい。たまに教室に本の現物を持ってきて「見せびらかす」のでもいい。関心のある高校生は、今なら自分で調べて本を取り寄せるだろう。

 この問題はなかなか言葉にできないのだが、周囲に一人でもそういう大人がいれば、ああそういうことが実際に可能なのか、と目を開かれる若い人は少なくないと思う。人のせいにするように聞こえると本意ではないが、そういう先輩や大人のいなかったことがある種「低い天井」になって自分にのしかかっているのを、ぼくはこの歳になってもありありと実感することがある。一定レベル以上の大学へ行くと、以下の本を学部のうちに読み終える学生がいたりする、というのを知ったのは、つい最近のことだ。

 

Mimesis: The Representation of Reality in Western Literature (Princeton Classics)

Mimesis: The Representation of Reality in Western Literature (Princeton Classics)

 

 

 春の雪が舞う昨日今日あたり、冬の間ご無沙汰していたアナログ盤を鳴らしている。

マイルス・デイヴィス『クールの誕生』の音圧。いい意味で「ブラバン」ぽい音。あとは憂歌団。自由になりたいと願いつつ、半年が過ぎ、一年が過ぎ、またほこりっぽい春になる。我慢できずに春用ジャケット注文。サイズが合えばいいが。


ザ・エン歌.MPG