俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ヴァージンショック~ベラー氏のご近所のこと

 何人かには写真もついていて、馬の写真には「?」とたじろいだが、ロス氏の写真に見覚えがあった。

 「ニューヨーカー」の創刊編集長のハロルド・ロスの若い日の写真だったのだ。これで、いきなり、わかった。「ベラー氏のご近所」は、雑誌「ニューヨーカー」の「街の噂」からヒントをもらったものなのだ。ニューヨークの街のさまざまな情景をスケッチした名物コラムで、ジョン・アップダイクをはじめ、たくさんの面々がこれまで書いてきたのはよく知られていることである。

 

ネットと戦争―9.11からのアメリカ文化 (岩波新書)

ネットと戦争―9.11からのアメリカ文化 (岩波新書)

 

  どうももう紙の新聞の時代じゃないみたい、というのは青山南さんのものなどを読んでいるとずいぶん前から感じるけれど、この本も、一時期のような、ただで何でも読ませてくれる時代は終わった、ということが結論のようでもある。それでも、上記の本の中で紹介されているMr.Beller's Neighborhoodのようなものは、こんな本でも読まなければ知ることはなかっただろう。

  ニューヨークの地図の上に無数の点が浮かんでいて、地図自体は埋め尽くされている感があるが、そのどれかを選ぶと、その場所に関するエッセイが読める。これは読者による投稿をサイト運営者が選んで掲載しているらしいけれど、まさに、ニューヨークの街のさまざまな情景。ひきこまれる。辞書は引く自分であるが、これは分からない単語はとばし飛ばしでも、結構いける。

 炭酸水seltzer売りの話など、興味深かった。中東欧の移民が持ち込んだ、セルツァ水は、専門のお店が家庭に売りに来るらしい。が、女性が仕事に出るようになり、家でそれを受け取る者がいなくなったこともあって、これが衰退していき、メーカーがボトルに詰めたクラブソーダのたぐいにとってかわられた、という話。これは差別的呼び方なのだろうが、「ユダヤ人のシャンパン」といった呼ばれ方もされていたという話は、ちょっと覚えておこうと思った。

 他に、女性が書いている、古着のコートの話。街でつぎつぎ、男性らから「素敵なコートだね」と声を掛けられる、いったいこのコートのどこが? という、それだけの話なんだけれど、都市生活者らしい生活感がある。

 

http://mrbellersneighborhood.com/

 他にも、上掲の本にはいろんなサイトを教えてもらっている。もう古い本だが(なにせ、グーグルという検索エンジンはすごい、といったことが新しいこととして書かれている)、その意味でまだ生きている。メモ代わりに。

 今日は月曜。今週は今日、ジャパンタイムズの日曜版が届いた。いやあ、ニュースで聴いて知ったつもりになっていること、上っ面の知ったふりを引っ剥がすと、こんなことだったのか、という発見続々。論調は辛口だが、なかなかいいよ。CNNのテッド・ターナーは開局の際、10年もしたら新聞なんかなくなる、と言ったそうだが、なかなかどうして、書かれたニュースや論説も、まだまだ必要だ。

 


YMF-1988 處女的衝擊-.flv