冬の星座
生が明るく、朗々と呼びかけるとき、疑惑の念をふきこむような神など存在しない。
ロシア・インテリゲンツィヤ史―イヴァーノフ・ラズームニクと「カラマーゾフの問い」
- 作者: 松原広志
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 1989/04
- メディア: 単行本
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「スキタイ人」という文学グループのことが書かれている。その一派の宣言を紹介した一節。計算ずくのヨーロッパ的理知に対置される始原的人間。生の明るさにあこがれ、その明るさの燃焼のままに生きる、なまなましい生命の体現者たち。思想史の本だとばかり思っていたら、上のような一節があってハッとする。
今までも説明的な用語としては、何かで読んでいたはずではある。ただし、よほどのきっかけがない限り、外国のちいさな文学グループの消長など、どうしたって他人事だ。まったく偶然のように、上のような一節に出くわして、ああそういうことかと、眼を開かれる。永遠からすれば無に等しいような、100年にも満たない化学的持続としての生の、まばゆい明るさ。
細かいことはもうどうだっていいじゃないか。遅かれ早かれ、ぼくもきみも星になる。この一瞬の真昼のような生にやどる、抒情的な清冽さをこそ見つめ、生きていこう。