俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

あがた森魚「赤色エレジー」

昨日土曜、NHKハイビジョンで『刑事コロンボ』を視聴。「権力の墓穴」。コロンボシリーズはオンエア当時観ているものと観ていないものがあって、これも観はじめてからしばらくは思い出せなかったんですが、進むうちにどんどん細部を思い出してきました。警察署の次長が物盗りに見せかけて友人の殺人をかばい、ついでに妻を殺害する、というストーリー。コロンボが鑑識から無線を受けて「肺から塩素は出ませんでしたよ警部。そのかわり○○と○○が検出されましてね」「それ何のこと」「つまり石鹸ですよ」というところで、「あ!これ観たことある!」と鮮明に記憶がよみがえってきました。いや~これ懐かしい。

で観終わって風呂に入り、出て来たらBS2であがた森魚さんがギターを持って映っていました。『BSまるごと大全集』で、日本のフォーク&ロックの特集。これもはじめから観たかったですね。ハンチングに黒縁メガネ姿で「赤色エレジー」を激唱。字幕も出たから一緒になって歌いましたよ。

「赤色エレジー」は、『青春歌年鑑'72』に入っています。あがた森魚大瀧詠一『僕は天使ぢゃないよ』にも入っていて、そっちも持ってますね。これ、湯浅学さんのライナーがとっても読み応え満点。「とりとめのなさを、単にダラシがないとか、もっと整理したほうがいい、などといって大人びた風をよそおって批判するやつがいる。ばかやろー。ロックだのソウルだのブルースだのジャズだのなんにつけてもそれらに良識を求めるクソったれどもめ。小金うならせてでけえつらしてるんじゃねえぞ」。いや~、引用しながらスカッとしますねこの啖呵。この曲だって、バランスを欠いた、過激でセンチメンタルな思い入れから産み落とされた、抒情のきれっぱしです。それをていねいにていねいに歌にすると、こうなるんですよ。

さみしかったわ どうしたの

おかあさまの ゆめみたね

おふとんもひとつほしいよね

いえいえこうしていられたら

下駄をはいた長髪のあがたさんがNHKの歌番組で歌う姿は記憶にありますが、1972年、あのときは僕は小学5年生、こういう音楽に目覚める直前で、「このひとは一体なんなんだろう」と不思議な感じがしたのを憶えています。また、僕、マンガってほとんど読まないので、この曲の着想のもとになった林静一さんの劇画『赤色エレジー』って知らないんですよ。このエントリーを書く直前にアマゾンで注文、今週中に来るでしょう。このへんの文化、今になってこうして追体験しているわけです。

しかし何ですね、昨夜は歌いながら、しみじみ金も名誉も要らない、こういう過激な浪漫がほしい、と思いましたね。昭和余年は春も宵、桜吹雪けば情も舞う。この七五調のすがすがしさ。なんか中原中也とか思い出しちゃったりして。今年は下駄履いて、はかま姿で仕事に行きますかネエ。