俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

辺見マリ「経験」

いやもう、こんな曲がお茶の間に流れていたんですから、70年代ってのはどういう時代だったのでしょう。

安井かずみ作詞 村井邦彦作曲 川口真編曲 辺見マリ「経験」

クリス・モンテス「愛の聖書」を知った後は、なーんだ、パクリか、と片付けたくなる向きもあるかと思いますが、パクリには納まりきらない強烈な魅力をもった曲です。そもそも、こうして調べてみて、この詞が女性作詞家の手になるものだということが改めて驚き。性的魅力たっぷりの女性の新人に「やめて…(ため息)」と歌わせるという発想は、どなたのものなんでしょうか。安井かずみさんの詞が先にあったのか、それとも、歌い手と曲が先に決まって、それに合う詞を安井かずみさんに依頼したのでしょうか。

詞が先か曲が先か、という問題には、僕のような素人には窺い知ることのできない機微があるようでして、近田春夫さんなんかは、どこかで、いまどきのアイドル歌謡は曲が先というのが普通、曲をあげてオケを作ってしまって、詞は、歌手がスタジオに着くまでに上がればなんとかなる、とお書きになっていましたが、この時代(1970年)の当時ってどうだったんでしょうかね。

あらためて驚くのは、この露骨なセクシー歌謡がお茶の間で平気で流れていたこと。本気で愛してもいないのに、会うたびに性交渉を求めてくる不実な男を、それでも拒みきれない、私ってダメね、という女性の心境を歌ったものです。これ、辺見マリさんのイメージに合わせて安井かずみさんが詞を書いて、それに村井邦彦氏が曲を乗っけた…という感じがしますが、ほんとのところどうなんでしょう。編曲がまた夜のムードたっぷりのオトナな感じで、まあ昼間っからガンガン聴くようなもんじゃないですわな。深夜、たまに、ひそやかに聴くのが粋ってもんです。それにしても、こんな女性、現実には存在しないだろーな。