俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

満月の夜君んちへ行ったよ


太田裕美 - 満月の夜 君んちへ行ったよ

 ドイツ語、ラテン語に加えロシア語の勉強もしているので毎日がとても充実しています。チェーホフの『結婚申し込み』(大学書林)を暗記してしまおうと思っています。一九世紀のロシア語の言い回しは現代と異なるところも多く、興味深いです。露和辞典もていねいに読んでいます。独房は語学学習のためには最適の場だと思います。

 

獄中記 (岩波現代文庫)

獄中記 (岩波現代文庫)

 
獄中記

獄中記

 

 この人の本はだいたいわかったので返却することにした。以上の部分、拾っておくが、拘置所暮らしがしんどくないはずがなく、ことさらに強がっている部分もあるだろう。

 少なく絞った教材とたっぷりの時間が語学習得に良いのはたしかなのだが、問題は動機づけの有無。モラール(士気)と言ってもよい。この人の場合、検察との闘争にまつわる尋常ではない精神的高揚があったのが見て取れ、そんなことでもなければ、やっぱり人は易きに流れる。この人も保釈後、拘置所を摸した仕事部屋を作ろうとしたが、終章でこんなことを書いている。

 去年秋、自宅から徒歩一五分ぐらい離れたところに仕事場を借りた。そこの五畳の洋間を当初、東京拘置所のように改造し、小机を入れ、持ち込める本も一〇冊以内にしぼって「思索の間」としたが、どうも小菅の独房のように集中して思索をすることができない。

 どうも猫が入ってきてダメなのだそうで、「独房計画はあきらめ、本棚とベッドを置いて仮眠室兼書庫にした」とある。こと執筆を仕事とするなら、わざわざ資料や本を遠ざける必要は普通はないので、まあそうでしょうな。あと原書の問題。

東京拘置所では外国語書籍の差し入れが認められていないので、やはり監獄ではなく娑婆で思索を進めたほうがよいと思いなおしたりする。

  たっぷり時間があれば、ぼくだってやはり原書が読みたい。拘置所で勉強するのは、やっぱりいやだな。

 あと以下の個所も拾っとく。

 ある時、私が「先生はどうして研究を発表するのをやめたのですか」と聞いたところ(渡辺氏はたいへんな読書家かつ勉強家で、システマティックであるかどうかは別として、研究はいつも続けている)、「書けないんだよなあ。文字にすると違ってしまうんだ。佐藤君も一〇年論文を書くことができない僕の苦しみを少しはわかってほしいよ」と言っていました。

 渡辺雅司教授のことね。ぼくは数回ご挨拶しただけで、格別に親しくしていただいたことはないが、ほんのいっとき札幌の大学の専任講師だったこともあって、さる後輩は渡辺先生に勧められて札幌にやってきたんだっけ。明治期に来日したメーチニコフという革命家の研究は面白かったが、あれは東洋書店のブックレットだったから、同社の倒産後は入手できるのだろうか。ピーサレフ本は、院生のころ、読みたいと思ってそれきりだった。古書で買ってもいいと思ったが、やはり今も、アマゾンでも日本の古本屋でも手に入らないようだ。

 

亡命ロシア人の見た明治維新 (講談社学術文庫 (548))

亡命ロシア人の見た明治維新 (講談社学術文庫 (548))

 
明治日本とロシアの影 (ユーラシア・ブックレット)

明治日本とロシアの影 (ユーラシア・ブックレット)

 
回想の明治維新―一ロシア人革命家の手記 (岩波文庫)

回想の明治維新―一ロシア人革命家の手記 (岩波文庫)

 
星の書物―東方的・詩的宇宙のヴィジョン

星の書物―東方的・詩的宇宙のヴィジョン

 

 

 佐藤氏の『獄中記』、文庫で出ているのを買おうかと思ったが、まあ、だいたいわかったからいいだろう。必要があればまた借りる。

  あと一箇所、ロシア人の知人のアレクサンドル・カザコフ(サーシャ)という人を紹介するくだりで

カラムルザとの人脈も、もともとはサーシャから出ている

とあるが、これはどのカラムルザ?