For Once In My Life
"For Once In My Life"- Gloria Spencer
「これは、だれの肖像ですか。」
「カイザルのです」
「では、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」
better later than neverという言い回しは、ヨーロッパ語ではどこにもあるんだろうか。この言い回しに初めて出会ったのは、ロシア語の教室だった。気の短いあんちゃんだったぼくは、「日本人だったら、いったん乗り遅れたら、そんなものくそくらえだと言うわなあ」などと誰かに言った記憶がかすかにある。
でも、旬のときにさっさと乗るのが粋で気が利いていて、乗り遅れながらついていくのは野暮な田舎者、というのだったら、ぼくが学問なり勉強なりをする順番は、決してめぐっては来なかっただろう。
「カイザルのものはカイザルに」。聖書のこの言い回しがそもそもどういう文脈で使われていたのか。いまからやっていたのではまったく間に合わないのだけれど、知らないままで通すよりはましだろう。回り道でも道は道、いつかどこかにたどり着く。希望を持とう。