俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

高橋真梨子「ジュン」

ラテン・ロックといえばサンタナより先にペドロ&カプリシャスを思い出すワタクシです。リードシンガーが高橋まり(=高橋真梨子)さんだったころの、ね。ところが、ソロ・シンガーとしての高橋さんとなると、自分でも不思議なくらい評価に苦しみます。たとえば「桃色吐息」なんか、高橋さんの代表曲ですけど、ワタクシ、あれがどうにも苦手。いい曲なのはわかるんですが…要はオトナの女の「華」の部分をああ手放しで歌い上げられちゃうと、ワタクシめの子供っぽい感性が付け入る隙がまったくないんですね。

でも、この曲ならわかりますよ。大津あきら作詞、鈴木キサブロー作曲、林有三編曲「ジュン」。自分の夢を追うことに夢中で恋人のことを省みないお相手に何度も泣かされて、それでも離れられない女性の心情を歌ったもの、といったところでしょうか。「ジュン いいからあなたも涙をおふき 何時も話した夢でしょ 止めないヨ 私」。こういうのはわかるんですよねえ。売れる作家になりたい、とかバンドで成功したい、とか、現実離れした夢を夢中になって語る恋人の子供っぽさを、私は止めないよ、と受け止めなければならない、そういう恋人をもったオンナの人ってつらいだろうなあ。

昔の話でたいへん恐縮ですが、「夜のヒットスタジオ」で高橋さんがこの曲を歌ったときには、ほんと、その歌のうまさに唖然としました。ただ声を張り上げるだけのうまさじゃないんですね。引くところは引いてメリハリをつけるその表情豊かさ。この曲は、シンガー高橋真梨子さんの真骨頂だと思います。