俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ピンナップ・ベイビー・ブルース

いつも書いていることですが、最初に入った大学時代のことを、時々思い出します。何か勉強したい欲求はあるんだけども、入った学科はその欲求とあんまりマッチしなくて、文学や芸術に対する漠然とした憧れと、実際に出席しなければならいない民法や簿記の授業の深いギャップを前に、呆然としたまま4年間が過ぎていきました。

いつも前を通りかかるパン屋さんに、どこかの製菓会社のポスターが張ってありました。何の商品のポスターかは忘れましたが、商品ではなく、それとは関係ない、普段着の女の子(たぶんモデルさん)がポーズをとって大写しになったポスター。可愛い。キュート。二十歳前の男の子なら誰でもそう思うような、きれいなポスターでした。ある日、意を決してパン屋さんに入り、「このポスター、いらなくなったらいただくことはできませんか」と訊いてみました。

パン屋さんのおばさん、たいへん困った顔をして、「すみません、近所の工業高校の生徒さんから、もうそういう申し出が何人もありまして…」とのこと。きっと、いつもパンを買いに来る16,7歳の高校生がそういうお願いをするのはわかるけど、この大学生、勉強もしないで何考えてるんだろう…そう思ったんじゃないかな。

シーナ&ロケッツの「ピンナップ・ベイビー・ブルース」では、歌の主人公は、地下鉄の駅のポスターの、水着姿の女の子に恋をします。生身の女性ではなく、ポスターのなかでほほえむ女の子をさらってどこかへ行きたい、というあてどのなさ、そのまま、当時の僕の心象風景です。

久しぶりに聴きたくなってCD棚を探しました。40分ほど「ここでもない、ここでもない」と探索した挙句、眼の前にあるのを発見。オリジナルLPは1981年9月5日発売『ピンナップ・ベイビー・ブルース』。ただ、このアルバムに収録されてるのは、シングルとはヴァージョンが違うんですよね。シングル・ヴァージョンが聴きたいなあ。ベスト盤とか買えばいいんでしょうかね。

ピンナップ・ベイビィ

お前をはがしてさらってゆきたい

ピンナップ・ベイビィ

お前をはがしてさらってゆきたい

(作詞はなんと、今調べると糸井重里氏です)