俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

Lover Man

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「でもいざ町を出ようと思うと駄目なんです。わかりますか? 町というのが本当に死んでしまうのなら、その死ぬところをこの目で見ておきたいという気持ちの方が強いんですね」

「あなたはこの町の生まれですか?」

「そうです」と彼は言って、それっきり何もしゃべらなかった。陰鬱な色あいの太陽が三分の一ばかり山に沈んでいた。

 

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

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 二月も終わる。

 CDケースをひっくり返すと、ああそういえば…というCDがいっぱい。ローランド・カークレスター・ヤングジョン・コルトレーンワーデル・グレイ…。CDなんか、もう買うことないよ。

 震災から5年。ぼくが研究室をたたんだのはその前の秋だから、あんな未曽有の大災害があった後は、だれもぼくのことなど覚えていないだろう。ぼくはぼくで、あの年の冬を茫然と過ごし、4月、ようやく引っ越し荷物の中にステレオがあることを思い出した。しつらえて、聴き始めたが、落ち着いてCDをちゃんと通して聴くのは10年ぶりぐらいだったんじゃないか。その後、アナログ・プレイヤーの安いのを買い足したんだった。で、スピーカーも替えてみた。

 あの年も寒い春だったな。ワーデル・グレイを聴いていた。この冬、ビリー・ホリデイを多少聴きこんだ耳で聴き返すと、「ラヴァ―・マン」をやっているのにようやく気付く。なるほどなあ、と思う。

 明日は雪。それを越せば、今度こそ、冬の終わりがヤアヤアとやってくる。

 まだ終わりじゃない。また、帽子をかぶって、リュックを背負って、どこまでも出かけよう。

 

 


Billie Holiday - Lover Man

ワーデル・グレイ・メモリアル VOL.1+10

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Memorial 2

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ワーデル・グレイ・メモリアルVol.1 (紙ジャケット仕様)

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ワーデル・グレイ・メモリアル VOL.1

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ワーデル・グレイ・メモリアル VOL.2+6

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