ゲット・バック
となると、「事実」と「虚構」という最初に考えた二分法は、正解とはほど遠かったということになる。そもそもこの二分法じたいが曖昧なものであることが多い。たとえば、よく引きあいにだされることだが、「歴史的」真実と「芸術的」真実という私たちにはおなじみのこの二分法は、古代のアイスランドのサーガには、全くあてはまらない。十六世紀後半から十七世紀前半にかけての英国では、「ノヴェル」(novel)という言葉は、事実と架空の出来事双方に用いられたようだし、見聞録(ニュース・レポート)も当時、実際に起こった出来事について述べられたものとはみなされなかったようだ。小説(ノヴェル)も見聞録(ニュース・レポート)も、事実か虚構かの区別をつけてはいなかった。事実と虚構の間に一線を画す私たちのやり方は、ここでは全く通用しない。
- 作者: テリーイーグルトン,Terry Eagleton,大橋洋一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/02/26
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ずっとE・H・カー『歴史とは何か』を読んでいて、ああそうだ、この問題は文学でいうとアレだ、と上の一節を思い出しました。イーグルトンの、その名も『文学とは何か』のドあたまの一節。基本中の基本ですね。
ここで原注にはLennard J. Davis 'A Social History of Fact and Fiction : Authorial Disavowal in the Early English Novel'という論文が挙げられていますが、一八年くらい前、これのコピーを取り寄せて、必死に読もうとしていましたね。あちこちで夢中でこの話をしゃべっていた記憶も。どこかにまだそのコピーとか、抜き書きとか、あるはずなんですが。
今朝も四時起き。ビートルズ『パスト・マスターズVol.2』、何度も聴いている曲ばかりなのに、素晴らしくてびっくり。「ゲット・バック」の「元いたところへ戻るんだ」って、意味深長ですな。
The Beatles - Get Back (OFFICIAL VIDEO) - YouTube
- アーティスト: ザ・ビートルズ,Carl Lee Perkins,Robert Blackwell,エノトリス・ジョンソン,ジョン・レノン,ジョージ・ハリスン,ポール・マッカートニー,ラリー・ウィリアムス,リチャード・ペニマン
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Literature and Society (Selected Papers from the English Institute, New Ser., No. 3.)
- 作者: English Institute,Edward W. Said
- 出版社/メーカー: Johns Hopkins Univ Pr
- 発売日: 1980/06/01
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