俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

愛に狂って


Elvin Bishop with Mickey Thomas, Fooled Around ...

 サザンオールスターズって、登場したとき衝撃でしたね。まずそのバンド名。「サザン」がアメリカ南部のロック音楽である「サザンロック」からとられていたことは、みんな知っていると思います。そして、このネーミングは伊達じゃない、という、アメリカ音楽を柔軟に消化した数々の楽曲。

 たとえば「栞のテーマ」って曲がありましたよね。あれは、エルヴィン・ビショップの「愛に狂って」がうまく桑田流に消化/昇華された一曲じゃないかな、なんて。

 ウィキに間違いがなければ、「栞のテーマ」は81年の『ステレオ太陽族』の一曲。映画『モーニングムーンは粗雑に』で使われ、あんまり枚数は売れなかったけどシングルにもなっているそうで。ラジオなどから流れていたのを時代の光景として覚えています。そしてサザンを通じて、僕らはみんな、エルヴィン・ビショップの確実な影響下にあった…

 今動画なんか見ますと、フレーズが似ている、という以上に、このグルーヴ感に打たれます。レイドバックしていながらたっぷりと充溢した情感。カントリーもブルーズもゴスペルも呑み込んで消化したアメリカ南部のロック音楽の懐の深さ。この「『南』性」を、桑田は70年代末~80年代初頭の日本語の音楽世界に持ち込んだ…

 80年代はじめは、まだまた70年代の文化が清算されずにあちこちに露頭している時代でもありました。今振り返る80年代文化って、テクノなりニューウェーヴなりのキーワードでくくられ、わりと型にはまったイメージですが、メディアが発達するにつれ、アメリカ音楽の古いもの、ローカルなもの、マイナーなもの、売れないもの、変なもの…が地方のぼくらの耳に届き始めたのもそのころだったはず。

 今ぼくのiPodのエイティーズのプレイリストにも、80年代のものではないけれど80年代に初めて知った音楽なんかも入っています(ロイ・オービソンとか)。そういう意味で、なんにも起こらなかったようでいながら、80年代って、やっぱり精神的故郷です。