俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

SKINDO-LE-LE


阿川泰子 "Skindo-le-le" - YouTube

 

 今年の夏ももう半ばを過ぎようとしていますが、この夏の個人的テーマは、思いがけず80年代でした。

 いや、「思いがけず」というわけでもないでしょうか。ここ数年、いや振り返るともっと以前からくすぶり続けていたあの時代への断ち切れない思いが、急に表面化しただけのことなのかもしれません。

 あの時代、女性ジャズシンガーのブームみたいなものもありました。ああいう機運の中で語られていたいわゆる「ジャズ」への反感みたいなものが強すぎて、自分ではちゃんと向き合ったことがありませんでした。何に? そう、たとえば阿川泰子「スキンドゥ・レ・レ」に。

 去年くらいラジオで流れていたのを聴いて、あまりに面白い曲で、以来この動画などをよく観ていました。もとの曲はよく知りませんが、ブラジルの「サンバ/フュージョン歌謡」みたいなもんだと思います。英詞がついていますが、よく聞くとそんな大層なことを歌っているわけでもないようで、「さみしかったら アタシたちと一緒に歌わない?」みたいな歌詞が聴き取れます。

 よそ様のブログなど拝見しますと、こうして眉間にしわを寄せて英語の歌を歌っている阿川さんより、TVのトーク番組で明るく笑っている阿川さんが良かった、みたいなご意見もあるようです。でもどうでしょう、まさに、悩ましげに眉間にしわを寄せ、ぼってりとした唇と舌を駆使してs、k、d、lなどの子音をねちっこく発音する阿川さんを、当時のヤローどもは見たかったんじゃないんですかね。

…ちょっとエッチですか? 

 この夏、iTunesStoreでこの曲を買いました。そして、最近のエントリーで書いた和田アキ子「だってしょうがないじゃない」、イースタン・ギャング「マジック・アイズ」なども加えた2時間にわたる全部で30曲ほどのプレイリストを作成し、iPodで聴いています。クルマでさんざ聴いてちょっと飽きてきましたが、でもいいんだなあ。

 80年代って、僕にとっては「失敗した自己実現」「空費された青春」「成就しなかったキャリア」「見つからなかった恋人」などの意味をもっているんでしょうね。80年代の終わりに、そういうのはいったんすべて忘れよう、と決めました。でも、あの時以来、けっきょくそういうものを何とか挽回しようとしてるんですね。つまり、ぼくの人生、振り返れば終始一貫「80年代ごっこ」の連続だったような…

 「抑圧されたものの回帰」というとちょっと大げさですか。ラカン風の「対象a」などというのともちょっと違うでしょうか。うん、やっぱり「80年代ごっこ」、そう「ごっこ」なんだな。ポップで、華やかで、色っぽくて、でも一皮むけばつましく地味な生活をしてそうなこの元女優の美人シンガー。男性はこういう恋人を欲しいと思い、女性はこんなお洒落で知的な美人になりたいと願い…と分析してしまうと身もふたもないですが、80年代の女性ジャズ歌手ブームって、そういうもんだとしたらとってもよく理解できるな、なんて思いながら夏の夜が更けてゆきます。

 

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