ダイヤモンド・ヘッド
ソソ(スターリン)は、早世した兄弟とは異なり、彼だけが生き残って母親の愛情を受ける者となった。精神病理学者のフロイトは、母親の極度の愛情を受けて育った人間は、生涯にわたり征服者の感覚、つまりしばしば本当の成功に導く自己の運命への確信を持つようになると述べたが、まさにその通りだった。ソソは、母親の愛情と高い評価を一身にあび続けたことで、彼女が託した大きなことを実現する能力が自分に備わっていると考えるようになった。彼は母親に理想の子供として扱われるうちに、学校でも一つのミスも犯さないように努めるようになった。[…]
北海道でも夏は30度を超えて暑い、というのは確かだが、35度という日はめったにないうえに、夕方、5時、6時になるとスーッと涼しくなる。夕立なんか来たら、あっという間に22,3度にまで気温が下がる。
その意味で、このところは北海道らしからぬ暑さかもしれない。先日、札幌からの帰り、終バスを逃して中間地点で一泊したけれど、あのときはホテルを探してぐるぐる同じところを回っているうちに9時を過ぎ、ホテルに入ってTVの気象情報を観たらまだ25度以上あったのでちょっと驚いたのだった。街は短パン姿の観光客で遅くまでにぎわい、それも面白かった。
で、7月の今が盛夏と考えればいいのかもしれない。ふつう夏の盛りは8月だろうけれど、ここ数年の感じだと、8月に入って、暑いなあという日が数日続いたと思ったら、もう秋の入り口みたいな風が吹いている。だから、もう今が夏本番と思って、せいぜい暑さを満喫するのがいいのかもしれない。
数年前、八月の終わりに青森の親戚を訪ねて行ったときは、まだ空の色が夏らしい青さだったのが新鮮だった。北海道に降り立つと、その時期はもう、内地に比べればはっきりと秋の空気なのだ。
あと二カ月もすれば、もう夏ジャケットの季節も終わって、厚ぼったい上着を着て外出する季節になっていることだろう。
29年前。学習塾のバイトくんだったころ、夏期講習が終わったお休みの時期に、本屋でNHKラジオのロシア語講座のテキストを買った。そして一時期親しかった人が話していたパール・バック『大地』など読んだ。『大地』は中国を描いた長編小説だから、たしかラジオの中国語講座のテキストも買ったのだろうか? いずれにしろ人生の大きなリセットの機が熟しつつあった。あの年も、暑かったと思ったら、あっという間に秋が来たのだった。
The Ventures - Diamond Head (1965)