俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ベサメ・ムーチョ~「人格者」をどう訳すか

magnanimous ▶adjective generous or forgiving, especially towards a rival or less powerful person:

 

Oxford Dictionary of English

Oxford Dictionary of English

 

  ぼくは野球にはいまほとんど興味がなく、知識もないのだけれど、たしか去年、イチローが日米通算の安打記録を更新したことは知っている。そのとき、メジャーリーグの安打数の記録保持者のピート・ローズがそのことを祝福せず、それだったらオレの記録にも高校時代の安打数を足してほしい、といった言動をおこなって狭量なところを見せた、というのもニュースで知っていた。

 それにたいするイチロー本人の回答のなかで、人格者、という言葉が出てきたのが記憶に残っていた。

 少しグーグルで検索すると、イチローは、ローズ自身に人格者であってほしかった、と言っていたのではなく、アメリカでもローズの記録を抜く人が現れてほしい、その人はジーターのような人格者であることが望ましい、といった、そんな発言だったのが確認できる。

 で、メモ代わりに書いておくけれど、この「人格者」をどう訳すかというのをずっと考えていた。

 去年は大統領選挙の年でもあって、しかもヒラリーとトランプの中傷合戦の様相を呈し、どっちが勝っても負けぎわが悪かろうなあ…と思っていたころ、何かでmagnanimousという形容詞を知って、ああこれか、と思ったのだった。

 リーダーズで引くと、「度量の大きな、雅量のある、寛大な、高潔な」とあるけれど、ニュースなどでは、はっきりと「ライバルをたたえる度量がある」という意味で

使われている。日本語でも「敵ながらあっぱれ」という言い方があるが、ライバルの力量をそのように認めるうつわがある、という、そんな意味だ。

 イチローのニュースについては英文の記事はチェックしていないからわからないが、ひょっとしたらそのように訳している例が見つかるかもしれない。

 

 昨日、おもちゃのようなラジオキットを組み立てたのはここに書いた。あのあと、Surfaceをたたんで、そのラジオをもう一度AMに切り換えると、実によく鳴る。で、NHK第一に合わせると、この声は道谷アナウンサー。黒崎政夫教授がSP盤を持ってきてプレイする番組だった。たぶん暮れやお盆に何度も放送されていて、昨日ですでに十回目かそこらだと言っていた気がするが、とてもよかった。クラシックやジャズ・ヴォーカルだけれど、電波に乗っても、音がCDとははっきり違う感じがわかる。

 で、今日の午後は春風亭昇太師匠がアナログ盤をプレイする番組。ただし十五時ごろだと、まだAMの入りが悪くて、いまひとつトークがわからない。そこで、これだけはタブレット端末のらじるらじるで聴いた。

 これも、そんな珍しい盤がかかるわけじゃないけれど、なかなかよかった。ゲストがタケカワユキヒデさんだったんだけれど、タケカワさんのお父さんがクラシック評論家で、そのために音楽一家だったというのをはじめて知った。七つ離れたピアノの上手なお兄さんが、高校時代、急にギターを始めて、トリオ・ロス・パンチョスのコピーをやるので、コーラスを手伝わされ、三度ハーモニーのつけ方をおぼえてしまったこととか、楽器店に出入りしていたら「君たちバンド?」と声を掛けられ、当時「サラリーマンコンパ」と呼ばれていたパブで生演奏をするようになったこととか。

 あとはタケカワさんが小学生のころの音楽の時間、先生が生徒を三グループに分けてドミソを歌わせるのだが、ドとソだけだとハモらないことに首をかしげる先生に、「先生、五度じゃハモるわけないですよ」と生意気なことを言ったりとかの思い出話。これは、たとえばぼくが音楽を教えていたとしたら同じ間違いをしただろうから、へえそうなんだと思いながら聴いた。

 いつだか萩原健太さんも『ロック巌流島』という番組で、この「五度」という言葉を使っていて、あのときは、ベーシストもきちんとコードのことを知っていないといけなくて、「オーギュメントなのに五度を弾くやつとかいますから」という指摘だった。そのときも、ぼくはオーギュメントが何のことかわからなくて、すぐ検索、ギターで指押さえをしてみて初めて、ああ、なるほど、オーギュメントは「五度」のところが半音上がるんだ、とわかったのだった。

 ラジオはほんといい情報源で、このあとまたこのSurfaceをたたんで聴こうと思う。


Trío Los Panchos - Bésame Mucho