ラジオの製作のまねごと~北海道は真夏の気温
チキタに感染した者は、たいていは夜中に突然高熱(四十度から四十度五分)におそわれる。高熱は四時間ないし六時間続く。朝になると患者はいくらか疲労をおぼえるだけで、すっかりなおった気になる。夜の間高熱に苦しんだことなど悪夢を見たかのように思いがちで、患者はふだんどおりに起き、なかには仕事に出かける者さえある。だが、実はここにこそチキタの油断ならない実体があらわれているのだ。チキタの病原菌がつくりだす特殊な毒素は大脳中枢に作用し、患者は記憶を喪失する。時には、この記憶喪失は決定的になり、その場合には患者の記憶は完全になくなり、野蛮人に変わってしまう。また時には、患者は顔だけ、名前だけを忘れることもある。部分的な記憶喪失は、それこそさまざまなケースが見られた。[…]
連休は人並みに連休の気分を味わいたい。そう思って、のんびり過ごしている。今日も、買いだめたままのDVDを観ながら過ごそうかくらいに思っていたけれど、アマゾンからラジオの組み立てキットが届いた。
キットと言っても、基盤は組み上がっていてはんだ付けは必要なく、それを電池とスピーカーにつなぎ、音量や選局、バンド切り替えのつまみをドライバーでねじ止めするだけだ。で、これらが入っていた紙の小箱自体が筐体となるように穴も空けられるようになっている。ただ、取説を見ると、牛乳パックに取りつける製作例が載っている。これは面白そうだと思って、老母がゴミに出そうとしていたアイスコーヒーの紙パックに説明書通りの穴をあけ、作ってみた。
チューナーはもちろんそんなにいいものじゃない。日中はAMの感度は悪く、NHK第二がかろうじて聴こえる。で、FMに切り換えると、これがいい感じで鳴る。今日は憲法記念日で、NHK-FMでは秋元康ソング三昧をやっている。これは聴かなくていいやと思っていたけれど、聴いていると面白い。稲垣潤一が三〇年以上前の「秋元くん」との出会いを振り返るところなんか、ひじょうに興味深かった。
日が暮れると、AMの感度もよくなってしばらく基礎英語など聴いていたが、これを書こうとSurfaceを持ってきて立ち上げると、ノイズがひどくなってしまった。FMに切り換えると、こっちはノイズまじりながら聴けるので、また秋元康ソング三昧を聴いている。
組み立てはほんの一時間弱で終わってしまって、とても電子工作と言えるレベルじゃないけれど、すごく楽しくて、とても明るい気持ちになった。自信を失って憂鬱になるようなときは、こういうことをやるといいかもしれない。パソコンの製作にも改めて興味がわいてきた。
ぼくは電子回路の書き方を習得する代わりに、横文字の本を読む方に行った。それはそれでよく、しかし、文系という呼ばわり方の中に理数オンチのニュアンスが感じられたりするときは、たいそう心外な気がすることはよくあった。機械いじり方面に行っていたとしたら、どんな人生だったか。技術進歩についていけず、家電量販店の下請けかなんかやってただろうか。
組み立てたラジオをずっといじっていると、老母は「いつまでも幼稚園児だねえ」と呆れている。
たまにあることだけれど、ゴールデンウィーク後半の北海道は二十五度越えの真夏の気温。そうだ三十年前の今日はバド・パウエルを聴いていたんだ。
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Make your own FM Radio - Part 1