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俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

通訳者に向かない自分は河原で石拾いでも~でなけりゃどこかでアナログ盤あさりでも

 森山は、それを植村に渡し、のぞきこんだ。紙には横文字が数多く記されていて、二人は、それを低い声で発音した。

 Earsの右にMemeeと書かれ、森山は、Earsというアメリカ語を知らなかったので、所持していた蘭英英蘭対訳辞書をひらき、その部分をひいてみた。Earはオランダ語のoorで、sは複数をしめすものらしい、と察した。oorは耳の意味で、その右にあるMemeeをそのままメメと発音した森山は、思わず植村と顔を見合わせていた。もしかすると、と思ったが、まさか、と否定する気持ちも強かった。Memeeとは、日本語の耳の発音なのだろうか。

 その下のMouthという横文字は、森山も口を意味するアメリカ語であることを知っていた。その右にある横文字を低い声で読んだかれは、短い叫びに似た声を漏らした。そこにはQuichと書かれていた。

「マウスとはアメリカ語で口にござりまするが、この横文字はクイチと読めます」

森山の言葉に、植村は大きくうなずいた。

次のWaterという横文字は水で、そこメゼと読めるMezeという横文字が記され、森山の眼は一層光をおびた。Lanternというアメリカ語は知らず、辞書をひいてみると、オランダ語では発音も同じLantaanで、灯火という意。紙に視線をもどした森山は、そこにAndonとあるのをみて、驚きの声をあげた。

「植村様。この横文字は、オランダ語ランターンに相当いたします。これを御覧なさりませ、アンドンと読めます」

紙をさす森山の指先を見つめながら、植村は何度もうなずき、

「たしかに、たしかに」と、喘ぐように言った。

 

海の祭礼 (文春文庫)

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  蝦夷地・利尻島に流れ着いて保護されたラナルド・マクドナルドは温順な性格でもめ事を起こすこともなく、長崎に送られた後、英語の知識の不足に苦悩するその地の通詞たちと出会う。その中でも多少の英語に通じていた森山栄之助は、このマクドナルドが他の異人らと違い、積極的に日本語を知ろうとメモを取っていることに気づき、上のようなショックを受ける。

 半分くらい読んだか。明日中に読もう。マクドナルドと森山、このことは知っておいていいな。

 ぼくは自分では、通訳としてはまるで無能で、かなり無理をして引き受けても失敗も多く、心から感謝されたことが一度もない。これは実はかなりうまい人でもそうなので、切り抜いておくのを忘れたが、先日の「天声人語」で、政治家が自分の失敗を通訳に押しつけることはよくあることだ、というベテラン通訳者の発言を引用していた。

 知り合いにはかなりタフで度胸のいい通訳者もいるが、何かの動画で見たら、その人ですら公式の大舞台では緊張しっぱなしで、こっちの胃まで痛くなりそうだった。

 このへんのこと。魂まで捧げるような苦しみに満ちた営為としての通訳。その結果、かえって非難されることすらある。

 

 昨日ちらっと書いたとおり、子どもの頃は人並みにメカや顕微鏡のたぐいがすきな科学小僧だった。もう遠い昔だが、今さらではあるけれど、ラジオの組み立てのたぐいは少しやってみるかもしれない。子供の頃の愛読書はエジソンツィオルコフスキーの伝記だった。それでふつうの勤め人になれってのが無理だったかもしれない。通訳者のような高度な社会性の求められる仕事なんかなおさら。

 あと、古生物学の英書とか。ロシアでもカザンツェフという作家が古生物学について書いてるらしいけど、それはどこで読めるんだろうか。地学の参考書も、捨てちまったかなあ。院生の頃、寮で、地質学・鉱物学の院生の話を聞くのがすごく好きだった。古生物学は理系とはいえ就職は絶望的で、いわゆる文系就職をする人が多い、とかそんな話。奇跡的に学芸員になれる人もときたまいるらしいが、その場合、修士課程も終わらない人がこの機会を逃すまいと中退して就職した例もあったような話だった。で、ぼくも夏になったら河原でせめて岩石拾いでも、といつも思うが、ただしアンモナイトはこの辺では採れないらしいのが残念だ。

  で、今日は平日なのだな。普段から家にいる身としてはゴールデンウィークは関係がないような気もするけど、人並みに連休気分も味わいたく思うし、かと思ったら今日は平日なので働いている人も多い。大学も、通常通りというところが多いのかもしれない。

 そうそう、押し入れのケースからCDをいろいろ出してきた。聴ききれないくらいあるから、新たに買わずとも、当分飽きない。先日買ったB・B・キングのDVDもすごくよかった。ブルーズというのは、その語義にもかかわらず、ぼくにとってはとても楽しい音楽だ。アナログ盤もどっさりあって、クリーニングしながらひと夏聴こう。飽きたらまたふるもの屋さんへ棚をあさりに。希望を持とう。

Paleontology: A Brief History of Life (Templeton Science and Religion Series)

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宇宙人と古代人の謎 (1978年) (自然界の驚異シリーズ)

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宇多田ヒカル - Automat