俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ルナルナ TIKI TIKI~コールドウェル『タバコ・ロード』における土地所有の概念

"You're going to make me leave?"

"I done started doing it. I already told you to get off my land."

"It don't belong to you. It's Captain John's land. He owns it."

"It's the old Lester place. Captain John ain't got no more right to it than nobody else. Them rich people up there in Augusta come down here and take everythig a man's got, but they can't take the land away from me. By God and by Jesus, my daddy owned it, and his daddy before him, and I ain't going to get off it while I'm alive. But durned if I can't run you off it - now git!"

 

Tobacco Road

Tobacco Road

 

 昨日のエントリーで「百年以上前の小説」と書いたのは誤りで、1932年の作だ。別の小説と混同していたので間違えた。

 さきほど読了。二日で読めるかと思ったが、正味三日かかった。これはもっと早く読んでおくべきだった。いろんな意味でそう思う。

 で、先日読んだスタインベックの『ハツカネズミと人間』も同じ古本屋で同時期に買ったはずで、まだ取りかからずにいる『怒りの葡萄』もたぶんそこで買ったので、どうやら元の持ち主は同じひとりの人らしいと考えつつある。読むのに支障があるほどではないが若干書き込みがあり、それが、同じ赤鉛筆なのだ。こういう、アメリカ農村小説に興味を持っていた学生さんか誰かだろうか。こうした選び方をしたのは、そういう講義を受けたとか、教授かだれかの影響なのかもしれないが、思い当たる先生は母校にはいなかったから、よそから流れてきた本だったのか。

 いや、二年前にやっつけたコナン・ドイル数冊も、去年の冬読んだモームも、やはり同じ色鉛筆で難語にアンダーラインがあった。同じ古本屋で買って、ずっと書棚に並べてあったもの。だから、ごく当たり前に洋書を読むのが好きな誰かだったのかもしれない。どれも、そんなに難しい小説じゃないし。

 上に引いた一節は、土地制度史に一時期興味を持っていた自分としてはとても面白い。農民が、地主の土地を耕しながら、心情的にはその土地を自分のものと強烈に感ずるというのは、どこかで読んだことがある。いろんな本で土地の所有形態の記述に出会うたび、抜き書きをつくって年代別に整理し、ノートを作ったことがあって、あのノートはどこへ行ったかなあ。墾田永年私財法とヨーロッパ的な土地制度を比べたりして、自分なりに面白かったが、一度、日本史の大先生にうっかりその話をしたところ、ひどく怒らせてしまったことがあり、それでそっち方面の興味は封印してしまったのだった。

 で、『タバコ・ロード』、これは季節としては二月から三月にかけての南部ジョージア州の話。ぼくは、本は買っておけば、いつか読まれて知的に発火する可能性を秘めているといつも考えているけれど、この小説は、文字通り、燃え上がるような大団円。これにガツンとやられるくらいだから、自分もまだまだ甘ちゃんだ。

 NHK-BSで月曜にやってるABCの『ジス・ウィーク』、ようやく録画を見る。毎日大きなニュースが報じられ、数日前のニュースなんて見なくてもいいようなものだが、ジョージ・ステファノポリスが大統領補佐官にバンバンするどい質問をぶつける。受けて立つミラーという補佐官がまた言語明晰に反論する。ヒートアップするが、罵り合いにはならない。すごく見ごたえがあった。

  明日くらいまでは暖気が入って、冬の終わりらしい気温だが、そのあとまた寒いらしい。この季節は、中原めいこさんなんか聴きたくなるのは、なぜだろう。


ルナルナ・TIKI TIKI COVER カイマナふぁみりーさん