My Favourite Things~語学徒の冬も半分を過ぎて
ロシアにおける「新芸術[アール・ヌーヴォー]」は西欧の模倣からはじまり、西欧を決して見うしなわなかった。そのことはシンボリズム専門のスコルピオン社から出版された翻訳書リストを一瞥すれば明らかである。プリビシェフスキイ全集、オスカー・ワイルド全集、クヌト・ハムスン、ダヌンチオ、エドガー・ポーの数冊の小説、ハウプトマン、イプセン、メーテルリンク、ストリンドベリの戯曲が見いだされる。雑誌に発表された翻訳を考慮するなら、このリストはさらに大きなものになったろう。
20世紀初めのロシアの、シンボリズムの時代の話。この辺に興味がある、と言うと、あんまり熱烈な同意は得られない、そんなわけでもないだろうが、札幌では食事に行った席でリアリズム小説の話になって、それはそれでたいそう面白かったりもするのだった。19世紀のリアリズム小説の隆盛は科学的な観察の手法の発展とパラレルで、フランスの自然主義の「自然」は自然科学の「自然」だ、といった話。うわあそう来たか。オレも猛勉強するぞお、と思った。
が、大学院時代、一番面白かったのは詩の講読とチュッチェフの政治論文の演習だった気がして、その辺、ぼくんちの本棚には参考書らしい参考書もないから、この本を年末から眺めてはいるのだった。ワイルドやポーの名前が出てきて、でしょやっぱり、と思う半面、北欧作家のものには原語では手も足も出ないから、そうするとストリンドベリなんかやっぱ英訳でどこかに落ちてるのを拾ってくるかと思ったり。ドイツ語ができればなあ、とこういう時にはよく思うのは今も変わらないが、まあ仕方ないな。
西欧のものをロシアが熱烈に受容したということは、つねにぼくの視野の中にある。たまたま語学力の不足などがあり、そこまで勉強が追いついていない。で、自主的な語学徒の冬学期などといいつつ3カ月と20日、英語とロシア語についてはまあまあ、この調子で続ければいいだろうというところ。もちろん、辛い点数をつければこんなもんじゃどうしようもないレベルだが、そう考えてやる気をなくすより、希望を持って長く続ける道を選びたい。
札幌では中古レコード店にも行かず。札幌へ出て本屋にもどこにも行かないなど、むかしは考えられなかった。東区にあったブックス宝島は、もうとっくにないのだろうか。
My Favorite Things - Julie Andrews