俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

あゝ無情~経済学の用語の混乱

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 これはほんとにそうだなと思いつ読む。経済学が難しいのは、用語の定義がはっきりしないまま、まるで自明のことのように使われているからで、無用の誤解や混乱のもとになっている。

 たとえば、株や債券を購入する人は多い。それを「株に投資」などと言うこともふつうだ。しかし、これは経済学で習うことと微妙に違うのだ。値上がり時に売却して利ザヤを稼ぐことを目的にしているならば、それは明らかに「投機」だ。むろん、配当益が定期的に入ってくればよく、資産として長く持っていようという人もいるだろう。長く持つつもりでいても、ある時、潮時と見て売り払うということもあるから、「投機」とそうでない場合とは、実は厳密に区別がつかないことも多い。その程度のことは学生時代からよく考えていた。

 上の記事は、もっと根本的にこの語のあいまいさを指摘する。

 一般の人が株や債券といった金融商品を購入することを「投資」と呼ぶのはとても一般的だ。これは広く言えば自分の金を企業などに融通する=貸す行為だ。ところが経済学者が「投資」と呼ぶのは、企業が事業のために土地を買ったり設備を建設したりすること。これは多くの場合、どこかから金を借りる行為をともなう。こうして、同じ「投資」という語が、貸す行為をあらわしたり、借りる行為をあらわしたりする。これでは大学一年生は混乱してしまう。

 ケインズマクロ経済学は、大学1,2年生の講義で習う人が多いと思う。それによれば一国の経済の需要は、個人消費、企業の設備投資、財政支出、純輸出となる。これをまともに聴いていれば、自分が売却益を目当てに株を売買する行為を「投資」とは呼べないはずだと思っていたが、株にくわしい同級生がいて、いや、あれは「投資」でしょ、「株に投資」と言うでしょ、と主張して頑として譲らない。なんか、こちらがどうでもいい難癖をつけているような後味の悪い言い合いになり、今でも忘れられない。ただ、それをきちんと説明してくれる本などは今まで読んだことがなく、上の記事を読んで腑に落ちたという次第。(追記:正確には、経済学者自身がfinancial investmentとbusiness investmentを微妙に使い分けているので、上記の同級生にもまったく理がないわけではない)

 これは英語を勉強するときもそうで、国語の時間に習う文法と、英語での主語・動詞といった用語とは、きちんと区別しないといけない。英語の時間に「形容動詞」などいう語が頭に浮かぶようでは、まるでわけがわからなくなる。が、それを明示的に教室で教わることは、少なくとも自分の場合はなかった。あるとき、ああ、英語には「形容動詞」ってないのか、とわかったという程度だ。インドヨーロッパ語のverbは、「動詞」と訳されてはいるけど、日本語の「動詞」じゃないんだよ、と教わったのは、大学院の古代教会スラヴ語の演習でのことだった。

  自分はもう教壇に立ってはいないけど、語学の先生なんか、このへんを親切に教えることができてなんぼじゃないか、と感じた。


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