俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ゴージャス~『タイム』誌の身売りの噂を目にした冬の日

www.buzzfeed.com

www.jiji.com

www.nikkei.com

http://mainichi.jp/articles/20161210/k00/00m/020/114000c

 

This is what helped Frage, Le Pen and other European populists find an audience in 2016. They wanted Europe to be a mosaic of states instead of an integrated commonwealth with a shared currency and open borders. They wanted, in short, for Europe to look more like it did before the E.U.'s grand experiment, never mind that this experiment was designed to prevent the nations of Europe from engaging in an endless cycle of wars.

('How People Power is Splitting Europe', 'TIME' Dec. 19. 2016)

 この号はベルリンやアンカラでのテロや暗殺の前の号で、ヨーロッパの右派の台頭を扱った記事も、まさかそんな事件は予想もしていない。二度の大戦に懲りて、それを繰り返さないために生まれたEUだが、ポピュリストの政治家らは、ヨーロッパを、EU以前の、諸国がモザイク状に独立し、国境を超える自由やユーロもない状態に戻したがっている、と、そんな論調。

 ベルリンのテロの犯人はミラノで発見され射殺された。

 オープン・ボーダーは性善説に立たないと成り立たないだろうから、テロの実行犯がまんまとイタリアに逃げていたとなると、この先どうなるのだろうか。 

 で、けっきょく、速報性という点では、週刊誌は劣るのは確かなのだ。日刊紙だって、前の日にニュースで知っていることが書いてあるわけで、早さという点ではTVのニュース専門局にはかなわない。では何を求めるのかというと、論説だ。上っ面じゃない、つっこんだ分析や洞察。それが読みたくて英語を読んでいるようなものだ。

 今日、『TIME』誌、けっきょく更新手続きをとった。もう少し迷っていたかったが、もう一回案内を見ると「10日以内に手続きを」とか書いてある。それを逃しても、また間際に案内が来るのはわかっているが、割引率ががくっと悪くなるはずだ。それならもう手続きしてしまえ、とサイトへ行って済ませてしまった。一部300円見当。三年契約にすると290円くらいになるが、そんな先のことまでわからないからね。

 で、そのあと、何気なく「『タイム』誌」で検索をかけていたら、上に挙げたような、経営不振、身売り、といった報道。400万部あった部数が、今や300万部ちょっとというから、その落ち込みは確かに激しい。こうなると、継続の手続きをとったのは、よかったのか、悪かったのか。

 もう手続きしてしまったものを、迷うも何もないのだが、ちょっと早まったかな、と感じなくもない。しかし、活字メディアが凋落しつつある、というのなら、それにとことんつきあってやろうじゃないか、という気もどこかではする。日刊の英字紙のことをここしばらく検討していたのも、いずれはああいうビジネスモデルはなくなっていくかもしれない気がするからだ。

 松本道弘氏のタイム本はずいぶん昔何冊か読んだが、懐かしくもあるし、あれは『TIME』を読めることに著者がどこかで酔っているようなところもあったように思う。書きぶりはずいぶん硬派でストイックだったと思うし、酔っているというのが悪い表現なら、『TIME』を読めるとこんなにかっこいい、といった夢を売る部分があったというか。

 むかし、雑誌社が女性向けの雑誌のベータ版というのか試作品というのかを街で配ってアンケートを取っているのを、何かのドキュメンタリー番組で見たのを憶えている。「今どきこのデザインの表紙は、持って歩いていると恥ずかしい。英字新聞とかだったらかっこいいですけどね」と20代の女性が言っていた。ズバリそこだ(急病で入院中、美人の看護師さんにえらく感心された話は以前書いたとおり)。今回、『TIME』を止めずに継続した理由の半分ぐらいも、そうした虚栄心の満足のためということは、認めておいてよいだろう。


Zoo Gorgeous ゴージャス