俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

雨のエアポート~機内で英字新聞をぶつぶつ読んでいた中年紳士の思い出

 

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 英字新聞がなぜこんなに好きかというのは、自分でもちょっとよくわからず、一番古くは、大学生のころ読んでいた『アサヒ・ウィークリー』の思い出までさかのぼれるのだが、その次となるとずっとあとで、大学に専任講師として赴任して二年目、突如英語の授業も持たされた年、今はもうない『アサヒ・イブニング・ニューズ』を一年とったことがあるくらいで、その後は別にもともと英語の専門家として雇われていたわけではないから、そんなに英語英語と眼の色を変える必要はないといえばなかったのだ。

 で、いまはもうそういうサービスはないのだろうが、かつてひんぱんに飛行機に乗っていた時は、新聞が無料で提供されていて、場合によっては、英字新聞がおいてあることもあった。あるとき、満席の飛行機で出張から帰ってくるとき、通路をへだてた席に、とても他人とは思えない、だぶだぶのスーツにメガネのとっちゃん坊や風の男性とその母親らしき和装の老婦人が乗っていた。

 そのとっちゃん坊やが、『ジャパン・タイムズ』をぶつぶつ声に出して読んでいたのだ。お母さんらしき人が、まったくこの子は…といった顔をしていた(かどうか記憶も定かではない)。この、どこか子供っぽい紳士もいい歳をして未婚なのだろうか、などと思って、そのときじゃないか。自分もまた英字新聞を読もうと思った。

 あれから何年経ったのか。いくつかの英文紙誌の講読を試して、こうして2016年という年が暮れようとしている。

 今月から来ている『ジャパン・タイムズ・オン・サンデー』は、とりあえず三か月の契約。そのあと続けてもいい。英語週刊誌は来年四月で来なくなるはずだが、継続の案内がまだ来ていない。

 で、ふと思って、ジャパンタイムズ社に電話した。いま日曜版を読んでいるが、日刊紙のほうを配達してもらうとすると、このあたりは何日遅れになるか。2日遅れだそうだ。これならありじゃないか。検討に値する。10年ほど前は、その御住所ですと4,5日遅れになりますがそれで構わないのでしたら…と、大変失礼かつやる気のない対応だったが、今日はそんなことはなかった。

 明日、読売にも問い合わせてみよう。『デイリー・ヨミウリ』時代は、一日遅れで、雪で飛行機が飛ばなかった日が一日あったほかは、毎日きちんと届いていた。一日遅れと二日遅れ、この一日の差。記事のクオリティは、ぼくのような非英語専門家には、五分五分ではないかと思うが、『ジャパン・タイムズ』のほうが定評があるようには聞く。ちょっと考える。

 むろん、お金のこともあるし、読む時間のこともあるし、簡単には決められない。一時期どっぷり英字新聞に没入できたのは、たまたま人生設計にない時間がぽっかりとあいてしまったせいだ。今は、日曜版だけでいいといえばいいのはたしかにそう。その分、読まれるのを待っている本がどっさりある。

 かつて札幌でよく泊まっていたホテルのロビーでは、その日の『デイリー・ヨミウリ』が買えた。いつか老母と泊まった温泉地の宿では『ジャパン・タイムズ』が置いてあったので、眠れない明け方、ロビーに降りて読んでいた。通訳案内士の試験の二次の面接では、面接官がヨミウリの購読者であることがしばしばあり、その話題で面接がうまくいった、などというのは、どこで読んだだろう。

 新聞病、というか、新聞熱、というか。さすがに新聞狂とまで自称するつもりはないが。もう紙の新聞の時代じゃないのはよくわかっているつもりだ。


香西かおり / 雨のエアポート