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俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

努力論~辞書は引こう、引いて損はない

[…]ついでに言っておけば、かつての文法・精読主義に対する反動から、最近の英語教育では、学習者にやさしい英文を多読させる授業がはやっている。英文の多読自体は、かつての英語達人たちの必須学習科目であったから、それ自体悪いことではないのだが、聞くところによれば、昨今の「多読プログラム」では、辞書を引いてはいけないとの妙な禁令が施されているらしい。これは感心しない。

 

努力論 決定版 (中公文庫)

努力論 決定版 (中公文庫)

 

  こういうものを引用するときの常として、著者と自分をアイデンティファイして快感を得るということは、決してしない方がいい。この人たちは、英文学のプロ中のプロであって、その人たちが英語教育の現状にお小言めいたことを言う尻馬に乗って増長することは、謹んでおこう。なにせmulctなどという難語が出てくるような大学院の演習の話が書いてあったりする。

 ただ、上に引いたことは、初級の外国語(英語でも、第二外国語でも)では単語はすべて初めから示し、辞書を引かせない方がいい、というもう一方の常識と微妙な緊張関係にあって、ちょっと厄介なことは厄介なのだ。

 たとえば、〈聞き流すだけで…〉式の英語教材のTVコマーシャルで、初老の男性消費者が「私らの時代は『辞書を引け』と言われたんですよ」と、かなり恨みのこもった口調で話すのを聞いたことがあるけれど、その恨みはもっともなのだ。初級も終わるか終わらぬかの生徒に「辞書を引け」とハッパをかける無理のある教え方が、昔は普通だった。

 その段階の学習者なら、まず初級の参考書に出てくる例文と語彙をちゃんとマスターすることから始めるべきで、具体的には、ノートの左ページに書かれた日本語訳を見て、右ページに英文を再現する、といったことをやると効果的。そこから読解へ進む。このあたりから徐々に辞書が重要性を増す。むろんこの段階でも、単語の意味があらかじめ示されているような英文解釈の参考書もあるだろうし、英書の多読など、ずっとあとになって始めればいい。あるいは、会話教材を喜んで使う人の多くは、そもそも本を読むことなど目標にしてないと思われる。

 辞書は引くべきだ、というのは、本屋で英語の本を手に取って、あるいは英語の新聞・雑誌を買ってきて「読めるかな(読めそうだな)」などと考えるようになってからの話。辞書は引いた方がいい。最初はすごく面倒だが、何度も引いているうちに、引かなくてもわかる単語が増えてきて、結果として長く続けられる。

 教科書・参考書に示されている初歩の単語・例文をマスターすべき段階と、本をどんどん読むようなレベルと、その中間というのが、語学教育/語学学習の暗黒大陸をなしている感はある。この中間地帯を突き抜けるにはどうしたらいいか、といったことは、学校で明示的に教わるということは、ふつうはないかもしれない。

 自分は、ペイパーバックをとにもかくにも読み切る、という授業を受けて、その影響が大きかったが、その授業自体の話は今日はやめておこう。ただ、それで影響を受け、本を読み切らなければ、語学も本格じゃないな、と思い知った。で、実際読むときには、ぼくはやはり、辞書は引いた。最初はすごく大変。ノートに書きだしたら、senile(耄碌した)、tepid(ぬるい)なんて、教養課程の英語じゃでてこないような単語がどっさりあった。しかし単語の意味がわかった方が面白いし、飛ばし飛ばし読むより、読み終えた時の満足感が大きいのだ。とうてい金じゃ買えない大きさだ。

 本でなくとも、ちょっと長めの新聞記事のようなものでも、読み終わった、理解した、という満足感をできるだけ何度も味わうこと、これが、上に述べた中間地帯を突き抜ける道だと思う。それには、辞書は引いた方がいい、引いて損はない。

 辞書を引くというのも、今は電子辞書のおかげでずいぶん楽だ。キンドルなら、画面にタッチするだけで辞書がポップアップする。だから、ぼくなどは、いまだに「辞書は引くな」という教え方が本当になされているのか、ちょっと信じがたかったりする。

 むろん、ぼくのころは電子辞書はなかった。ぼくは失敗に終わった高校生活の思い出のしみついた英和中辞典がどうしても嫌で、古本屋で新品同様で買ったコンサイスをかばんに入れて使っていた。たしかに限界はあるが、あれを持ち歩いていて、英語を読めるようになった、という実感は、一時期強烈にあった。電子辞書は、十年以上前に買ったのがいまだに使えるので、これで十分だ。

 ただ、某社の上級者向けの電子辞書というのは、いっぺん使ってみたかった気がする。

 

 

セイコーインスツル 電子辞書 英語上級モデル SR-G10000

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セイコーインスツル 電子辞書 英語上級モデル SR-E8600

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エミ子の長いつきあい 1978年1月10日