俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

Just A Little Swing~内田義彦の読書会批判を読む

 ところで、本を読むのも難しいけれど、読書会をもつのもまた難しい。読書会というのは持続的に集まって本を読むので、一般化すれば研究会に当たりましょう。研究を軸にした持続的な集まりですね。ところが、そういう会を、楽しく実りがある会であるようにもってゆくのは、予想外に難しいんです。

 

読書と社会科学 (岩波新書)

読書と社会科学 (岩波新書)

 

  skypeで読書会をやっている人たちがいるらしい━━そんなことに気づいて、急に好奇心をつのらせたりもしているけれど、原点に帰っておこう。

 小学生のころ、何回か同級生が一緒に勉強しよう、とうちに来たことがあるけれど、それにいちいちつきあおうとするぼくは、まだ若かった老母に叱られた━━勉強はひとりでするもの。ともだちとだらだら過ごしながら遊び半分でするものじゃないよ、と。

 ぼくの〈読書会が苦手〉は、どうもこれが原点にあるらしい。

 高校になって、英語の先生と話していた時のこと、「いや、そんなことはないさ。大学へ入ってごらん。司法試験の勉強なんかは、グループを作ってやるもんなんだよ」と言われて、ああそうなのか、と思ったこともあったけれど、自分がそれに相当する勉強の機会に恵まれたことはなかった。

 ずっと後年になって、仙台の大学にそれこそ研究会で行ったとき、学内に「高速学習会」とか、そんな名称のサークルの告知かなんかがあって、ああ、ここにはそういうのがあるんだな、と思ったことであった。ミクロ・マクロ経済学なり、民法憲法なりは、公務員試験に必須の科目だが、なにもそのレベルならとてつもなく難しいということも実はないので、一日の長のある先輩がちょっとたたき込めば、基礎はだいたい習得できてしまう、ということだろう。ああいう大学は、教授が/大学が至れり尽くせりの指導をしてくれるからその種の試験に強いわけじゃない。そういう自主勉強の伝統があるのだ。

 ただ、これは、指導する先輩なり誰なりがいないと、やはり難しい。あてずっぽうを教え合っているようなレベルだと、得るものも少ないから、興味が続かず、やがて空中分解してしまう。はっきりした正解のないような、思想書の読書会の場合は、ことさらそうだろう。上記の書にはこうある。

 一人で印象深く読んできたこと、心に感じたままを率直に発言したことが受けとめられ深められる形で議論が進まずに、それていく。何か奇妙なずれを感じさせられることが多いんです。研究会には研究会独特の雰囲気があって、自分の心に、まとまらないまま、しかし深くまといついているものとは無関係に議論が流れる。平板な公式論に吸いこまれちゃったり、あるいは会によっては意見の共進会というか目覚ましい意見の競い合いですね、コンテスト風の。殺気立った雰囲気を醸し出しながら新奇を狙った議論のうずがまく。大混戦のあげくの果ては、いつもの公式論的な「まとめ」にまとめられて「大過なく」終了する。という結果になりがちで、空しいというか、お座なりではなく、まともに自分をさらけ出して発表をしたり発言したりしなきゃよかったなという気になることがあります。

 趣味の会としてやっているうちはいいのだが、すこしでも中身を濃くしようと、研究会の性格を持たせると、とたんにそうなる、これはほとんど法則的、と仮借ないが、これは大いに言える。

 大学一年のころ、下宿の先輩が浮かない顔をして帰ってきて、ぼやくには、「今日、自主ゼミでへ~ンな議論になってさあ。『これは間違い、成り立ちません』『いや、限界消費性向と平均消費性向が一致するときはそうなります』『じゃあ限界消費性向と平均消費性向が一致するのはどういうときなんですか』って…」。くわしいことはぼくもわからないが、理論的に展望のきく指導者がいれば、きっとそんな議論にならないだろう、という、そんな話だったか。

 我を通すために持論に固執しない、というのは、言うは易く実行のむずかしいことで、あからさまに誤りなどを指摘されて感情を害さずにいるのもあんがいたいへんだ。ああ、ここはたんなる我の張り合いの場だな、と感じさせられて場を去るということは、ぼく自身何回かあった。

 だからかもしれないが、うまくいっている読書会/研究会のたぐいを耳にすると、とてつもなくうらやましい。内田先生が言う通り、読書会/研究会は「大いに有用━有用だけでなく必須」というのは、わかるんだよ。内田先生、もし今おられたら、当節ではスカイプ読書会のたぐいがさかんなことをについて、何とおっしゃっただろうかね。

 また何か思い出したら、明日以降。今日はこんなところかな。

 こないださ、チャーハンにブツ切りにしたナルトを混ぜて作ってもらったのが、すごくおいしかった。


2015 11 8 Just a little Swing vol 4 Steppin' out & LCSmoove