さいざんすマンボ~civil warをどう訳すかなど
そもそもこの諸国をヨーロッパとユーロ圏に統合したのは、民主主義的な空間の中で安定させるためでしたね。ところが今日、ヨーロッパの官僚的・通貨制度的なメカニズムは、まだ土台が堅固とはいえないこれらの国のデモクラシーに安定をもたらすどころか、この諸国を過去の不安定期のうちでも最悪だった時期に似た状況の中へ加速的に追い込んでいる。
そうですとも、事態は深刻です。ファシズムのイタリア、軍事政権のギリシャ、フランコのスペイン、アントニオ・サラザールのポルトガルなどの復活に直面するリスクは充分に現実的です。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
- 作者: エマニュエル・トッド,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/20
- メディア: 新書
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これから12月の中旬くらいまで、日の入りがとても早い時期になってゆく。太陽の高さがいちばん低くなる日(昼が一番短い日)はむろん冬至だが、日の入りの時刻が最も早いのは12月の十日のちょっと前ごろと思う。四時といえば薄暗い、この時期、雪も降りだすし、ちょっと遠い図書館からは足が遠のくのである。
上掲の本は冬の終わりと初夏が入り混じる、そんな季節に借りてきて読んでいた本で、もちろん国際情勢はその時と比べても変わっており(イギリスの国民投票でのEU離脱の選択を予想できた人などどれほどいるか)、もう上の分析も下書きに拾っておいたまま眠らせておいてもよいのだろうが、経済先進国においても内向き・排他的の傾向が強まりつつあるこの冬に、やっぱり引いておこう。
これを読んでおっとなるのは、以下の一節も頭をよぎるからでもある。
流石フランコ批判と市民戦争に関する物は見当たりません。しかしフランスにおける警察力の抑圧体制の厳しさを見たあとでは、街頭に多くの警官を見ても特異には思われない。この国のファシズムとは何ものなのだろうかという疑問が浮き沈みします。四半世紀を経た今、デモクラシーも風化した如く、ファシズムも風化に風化を重ねて、両者の体制とその開きは結果においてそれ程大きくなくなってしまっているのではないかと思われます。『カタロニア賛歌』の中でオーウェルが「結局この国のファシズムは北ヨーロッパのファシズムや独裁制の如く、徹底した陰さんなものにはならないだろう」と予言したのは当たっているように思われます。[…]
でもって、『カタロニア賛歌』を読む必要が出てくる、というふうに、関心が散ってゆく。でも散ってゆくばかりでもなく、波紋が重合して大きなうねりとなることもあるから、過度に禁欲的に読書範囲を狭めることもまたよくないのである。
市民戦争、というのがミソで、スペインのあれに関してはそう呼ばれることが多いが、ふつうは「内戦」と訳すことが多いcivil warという語。アメリカでCivil Warといえば「南北戦争」、イギリスでは「清教徒革命」だ。ロシア革命のあと内戦があったのも周知のことで、するとブルガーコフ『白衛軍』の新訳はどこかから出ないのか、といった話にもなる。
それにしても、三年前からCNNを観ているが、昨年のフランスのテロといい、今年のイギリスEU離脱やアメリカ大統領選といい、悪夢のような報道が続く。