オデッサの階段
かりに、われわれが次のような一連のモンタージュ断片をもっているとしよう━━
白髪の老人
白髪の老婆
白い馬
雪におおわれた屋根
これだけではまだ、この一連のショットが表示しようとしているものが、はたして「老齢」であるか「白さ」であるかは確実にはわからない。
このような一連のショットがしばらく続いてから、やっと、判断の手引きになるようなショットが発見され、そしてそのショットがたちどころに、甲なり乙なりの方向において、これらの一連のショットの全体に「命名する」という場合もあろう。この煩わしさをはぶくためには、手引きとなるようなこのようなショットを、できるだけシークエンスの初めの方におくことが得策であるということになる[…]
きのうの『パーマネント野ばら』、あまりに強烈で、寝ながら、ずっと主要なシーンを繰り返し夢に見ていた気がする。でもって、あんまり寝た気がしない。強烈だったな。しばらく抜けそうにない。
細かいことだが、子供の自転車が無人のまま海辺の坂を走り落ちてゆくシーンがあったじゃないですか。で、トラックと衝突し海へ…というあそこは、やっぱりエイゼンシテインの有名なシーンの引用なのか。我ながらとってつけたようなこと言ってますね。エイゼンシテインなど、ボックスセットを買ったまま10年も観てないのではある。
映画は、これからも詳しくなったりはしないだろう。ただ、いいものを「いいなあ…」と感嘆しながら観る感性は(だいぶ摩耗してしまったものの)、なるべく失わずに持っていたいな、などと。
そうそう、ベストを買った。寒いときはセーターを着ればいいのだが、セーターを着るほどじゃないが外は風が冷たいという季節は秋にも春にもあって、そんな時着るにはいいんじゃないかと思って。
『パーマネント野ばら』、菅野美穂と小池栄子のほかにも、メガネっ娘が出てたけど、あの人いいなあ。菅野美穂が江口洋介演ずる理科教師と付き合っていることを告白すると、にっこり笑って「何べんも聞いたよ」と答える、あのシーン。あの映画の全重量が、あの前後数分に向かってなだれ落ちる。目に焼き付いて離れない。